琉球王国の大交易時代を再確認2021年10月25日

『アジアのなかの琉球王国』(高良倉吉/吉川弘文館)
 コロナが下火になったので、明後日から沖縄に行く予定である。気分を盛り上げるつもりで次の本を読んだ。

 『アジアのなかの琉球王国』(高良倉吉/歴史文化ライブラリー/吉川弘文館)

 琉球の大交易時代に関する読みやすくて分かりやすい入門書である。著者が中国や東南アジア各地を大交易時代の痕跡を求めて訪れた際の印象が随所に挿入されていて興味深い。

 著者の高良倉吉氏は琉球史の研究者で著書も多い。同氏の 『琉球の時代』を9年前に興味深く読んだ記憶があるが、内容の大半は失念している。本書読了後、『琉球の時代』をパラパラとめくってみると、本書で語られていることの多くは『琉球の時代』にも書かれていた。あらためて、おのれの忘却力を思い知った。

 著者は『アジアのなかの琉球王国』のあとがきで、本書は自身が過去に発表したものと重複しているとしたうえで次のように述べている。

 《同じ内容のものを場面を変えて発表するなどということは研究者として恥ずべき行為だとお叱りを受けるかもしれないが、私の意見はそう思う方とは異なる。新しい読者や聴衆が求めるのであれば、たとえ内容は同じであっても、歴史像の普及に責任を負う歴史家はサービス精神に徹しなけらばならない、と思っている。》

 歴史の啓蒙書にお世話になることが多い私は、著者の見解に賛同する。学校の先生は重要なことは何度も繰り返して話すし、何度も繰り返して聞いたり読んだりしなければ頭に定着しない事項は多い。

 ということで、本書であらためて確認した要点は次の二つである。

 ・15世紀の琉球王国は、東アジア・東南アジアの交易の中心的存在で、それは国が司令塔になった中継貿易が中心だった。

 ・琉球王国が交易の主役になったのには、明の海禁政策や日本の戦国時代などいくつかの要因があり、そんな外的要因の変容によって琉球の活動余地は縮小した。

 また、本書ではいろいろな「作り話」や「俗説」批判的に紹介している。「琉球王国は武器をもたない平和な国だった」という話をよく聞くが、これも信じるに足らない俗説だそうだ。

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