ジャーナリズムの現状を問う芝居『ファクトチェック』2021年09月21日

 紀伊国屋ホールで青年劇場公演『ファクトチェック』(作・演出:中津留章仁)を観た。新聞社政治部を舞台にジャーナリズの現況をテーマにした芝居である。

 菅総理を投影したような官房長官が登場し、記者会見や銀座の高級バーのシーンもある。最近の政界事情を反映した笑える科白も多い。だが、パロディではなくリアリズム劇である。

 登場人物がステレオタイプに見え、浅薄なマスメディア批判のアジプロ劇に感じられ、開幕からしばらくはやや辟易気分だった。しかし、次第にドラマに引き込まれ、2時間50分(15分休憩を含む)の舞台を退屈することなく楽しめた。現実的な題材とストレートなメッセージ性には、やはり力がある。

 終演後のアフタートークでは東京新聞記者の望月衣塑子氏が登壇した。作・演出の中津留章仁、役者の葛西和雄氏と3人のトークは、メディア状況も話題になったが、むしろコロナ禍における文化・芸術の状況がメインだった。