風間杜夫72歳がテント芝居に初挑戦『ベンガルの虎』を観た2021年06月23日

 新宿花園神社境内で新宿梁山泊のテント芝居『ベンガルの虎』(作:唐十郎、演出:金守珍)を観た。この芝居、初演は1973年の状況劇場(紅テント)上野不忍池公演だそうだ。あの頃、不忍池の紅テントを何本か観たが、『ベンガルの虎』を観たかどうか定かでない。今回の芝居を観終えても、はっきりしない。わが記憶力への信頼度は年とともに低下しているので仕方ない。

 新宿梁山泊の芝居を観るのは一昨年の 『蛇姫様』以来2度目である。今回の芝居、風間杜夫が72歳にしてテント芝居に初挑戦するのが話題になっている。10月10日の朝日新聞夕刊は「風間杜夫72歳 青春ふたたび」との見出しで紹介していた。

 若き日の演劇青年・風間杜夫は紅テントの芝居を観て「恐ろしい世界だ。太刀打ちできない。俺はここじゃないな」と思ったそうだ。彼は2年前に 『唐版 風の又三郎』(演出:金守珍)に出演しているが、あれはシアターコクーンという立派な劇場だった。今回の公演パンフには「50年を経て、(テントに)見合うだけの顔が出来ただろうか」との本人コメントが載っている。

 『ベンガルの虎』は『ビルマの竪琴』をモチーフにした芝居である。白骨街道に倒れた日本兵士やバッタンバン(カンボジアの都市)に出向いたラシャメン(娼婦)たちと戦後日本の下町の猥雑な人々が時空を超えて交錯する夢幻世界を紡いでいる。怪しくも懐かしい事物が盛りだくさんで、テント芝居ならではの仕掛けも多い。まさに唐十郎の世界である。

 とは言え、往年の状況劇場とは何かが違う。私が年を取ったせいか、役者たちの雰囲気はどこか現代的に感じる。若い役者が「月光仮面」に変身しても、彼らが本物の(!)月光仮面を知る筈がないという目で見てしまう。金守珍は「歌舞伎も同じ演目が進化していくように『ベンガルの虎』も進化し続けている」と語っている。そういうことなのだろうと思う。