『キネマの天地』は演ずる人々を讃える芝居2021年06月13日

 新国立劇場小劇場で『キネマの天地』(作:井上ひさし、演出:小川絵里子、出演:高橋恵子・他)を観た。

 私は映画『キネマの天地』(監督;山田洋二、脚本:井上ひさし)は観ていない。映画と同名の芝居は映画版の続編という位置づけの別の作品だそうだ。この作品は手元に戯曲がなく、事前知識なしで観劇した。

 蒲田行進曲のメロディで幕が開き(実際の「幕」がない舞台だったが)、世代が異なる4人の花形女優たちが若い順にスポットライトを浴びながら登場し、それぞれが繰り返しのエスカレーションを演ずるのが面白い。女優4人のさや当てを軸に展開するミステリー仕立てのコメディで、芝居の楽しさを堪能できた。

 4人の女優は銀幕のスター、つまり映画女優だが舞台にも立つという設定である。その女優たちが舞台稽古をするシーンがあり、俳優の演ずる俳優が演ずるシーンに入れ子細工の面白さを感じた。映画や舞台を作る人々へのオマージュのような芝居だった。