『シェイクスピア物語』で20編の筋書きをまとめ読み2025年09月09日

『シェイクスピア物語(上)(下)』(ラム姉弟/安藤貞雄訳/岩波文庫)
 猛暑の日々の暑さしのぎ気分で、家の中でゴロゴロしながら次の文庫本を読んだ。

 『シェイクスピア物語(上)(下)』(ラム姉弟/安藤貞雄訳/岩波文庫)

 この文庫本は私が購入したものではない。数年前102歳で逝った伯父が残した山積みの本のなかから見つくろって持ち帰ったものだ。自分であえて買おうとは思わないが目を通してみたい――そんな本のひとつであり、冥界の伯父からのプレゼントである。

 私は小学生時代に『少年少女世界文学全集』(講談社)でシェイクスピアの『ハムレット』や『マクベス』に接した。あのとき読んだのはラムのシェイクスピア物語だったのだと思う。その後、シェイクスピアは劇作家で、その戯曲を子供向きの物語にリライトしたのがラム姉弟と知った。

 子供向けにリライトしたのは主要作品だけと思っていたが、本書2冊で20作品もある。ラムは『リチャード3世』などの史劇を除外している。シェイクスピアの全34作品から史劇を除くと25作なので、そのほとんどをリライトしているのだ。

 ラムの20作品中、私が戯曲や舞台で知っているのは次の12作だった、  『あらし』『真夏の夜の夢』『から騒ぎ』『お気に召すまま』『ベニスの商人』『リア王』『マクベス』『終わりよければすべてよし』『しっぺい返し(尺には尺を)』『ロメオとジュリエット』『ハムレット』『オセロー』

 次の8作品は戯曲も読んでいないと思う。今回はじめて内容を知った。

 『冬物語』、『ベローナの二紳士』、『シンベリーン』、『じゃじゃ馬ならし』、『まちがいの喜劇』、『十二夜』、『アテネのタイモン』、『ペリクリーズ』

 シェイクスピアの筋書きを20編まとめて読むと頭の中がゴチャゴチャになる。死んだふりをして騙す、女性が男装して騙す、同じ顔の別人が混乱を引き起こすなど、似たような話が多く、頭の中で混ざってしまう。強引な展開も多い。400年以上昔の物語だと思うと、人間の物語作成能力の基本は400年前からさほど進歩していないようにも思えてくる。

 シェイクスピアの作品では、登場人物の心理や態度があっけなく変転することがある。人の心理を丁寧に描こうとする近代の文学ではありえない展開に見える。だが、人間の心の可塑性を冷徹に表現し、面倒くさい近代人を超えているようにも思えてくる。猛暑のなかで20編の筋書きを読みながら、そんなことを妄想した。

 戯曲を読んでいない『じゃじゃ馬ならし』と『アテネのタイモン』に驚いた。かなりぶっ飛んだ話で、シュールなブラックコメディのようでもある。いずれ戯曲を読んでみたい。

 本書を読みながら、この筋書きに続けて戯曲を読むという読み方がよさそうに思えた。筋を追う気分から離れて戯曲の台詞を多様に味わえそうな気がする。

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