NODA・MAP公演『フェイクスピア』の不思議世界2021年05月30日

 東京芸術劇場プレイハウスでNODA・MAP公演『フェイクスピア』(作・演出:野田秀樹)を観た。出演は高橋一生、白石加代子、橋爪功、前田敦子、川平慈英、井原剛志、村岡希美など豪華である。野田秀樹もシェイクスピア役とその息子フェイクスピア役で登場する。

 プロメテウスが神から火を盗んで人類に与えたように、神から「言葉(言の葉)」を盗んだ男の物語という軸に、イタコと夢の世界がシェイクスピアを絡めて展開していく芝居である。もちろんわかりやすい話ではなく、言葉遊びやフェイクを含めた言葉を巡る不思議世界に圧倒される。最後にサンテグジュベリの夜間飛行から1985年の日航機墜落事故を思わせる迫力あるシーンに転換するのには驚かされた。

 今年79歳の白石加代子と橋爪功が元気に活躍する舞台を観ることができたのもうれしい。見習いイタコ役の白石加代子が芝居の冒頭とラストで女優・白石加代子役になるのが面白い。新劇出身でシェイクスピア劇をいくつも演じてきたという橋爪功がリヤ王、オセロ、マクベス、ハムレットに憑依するシーンも楽しめた。

 この芝居、前田敦子は白石加代子の母親、高橋一生は橋爪功の父親の役を演じる。時間も空間も自在に操ることができる芝居ならではの世界である。