歌舞伎座で唐十郎、野田秀樹想起の時間旅行 ― 2018年03月23日
◎祝祭気分になれる場所
歌舞伎座の「三月大歌舞伎」昼の部、夜の部を通しで観劇、午前11時から約10時間かけて次の六つの演目を観た。
1. 国性爺合戦(愛之助、扇雀、芝翫、秀太郎、他)
2. 男女道成寺(雀右衛門、松緑、他)
3. 芝浜革財布(芝翫、孝太郎、他)
4. 於染久松色読販(玉三郎、仁左衛門、他)
5. 神田祭(玉三郎、仁左衛門)
6. 滝の白糸(壱太郎、松也、他)
『芝浜革財布』ので市川中車主演をテレビ中継で観た以外はすべて初見だ。
『芝浜革財布』の元は著名な古典落語で、歌舞伎版ではハッピーエンドのラストシーンで落語とは異なり政五郎が三年ぶりに酒を飲む。ここで飲んではまたアル中に逆戻りするのではと心配になるが、そこが歌舞伎のおおらかさであり、この芝居を祝祭的にしている。
歌舞伎には時事ネタや楽屋オチが挿入されることも多い。今回は『国性爺合戦』と『神田祭』にカーリング姿や「そだねー」が出てきた。祝祭気分になる。
◎『国性爺合戦』と『滝の白糸』に惹かれた
「三月大歌舞伎」の目当ては昼一番の『国性爺合戦』と夜ラストの『滝の白糸』である。どちらも著名な演目なので、生きているうちに一度は観ておくべきだろうと思ってチケットを手配した。
チケットをゲットした後でふいに気づいた。『国性爺合戦』と『滝の白糸』に惹かれたのは記憶の深層のせいだ。これらの芝居のパロディというか別バージョンを若い日に観ていたことをぼんやりと思い出したのだ。古い記録を探索し、次の観劇記録が判明した。
※1975年3月上演『唐版滝の白糸』(作:唐十郎、演出:蜷川幸雄。主演:沢田研二・李礼仙)
※1989年11月上演『野田版国性爺合戦』(作・演出:野田秀樹、主演:桜田淳子・池畑慎之介)
前者は43年前、後者は29年前の芝居だ。観たという記憶がかすかにあるだけで内容は失念している。上演当時、沢田研二は28歳、桜田淳子は31歳。私は沢田研二より1歳下、桜田淳子より10歳上だ。みんな若かった。
上演内容を失念しているので断言はできないが、「唐版」や「野田版」の芝居を観たときにオリジナルを観たいとは思わなかった。前衛的な「唐版」「野田版」で十分に堪能し、オリジナルへの関心はわかなかったのだ。
にもかかわらず、今回の観劇には未見のオリジナルに触れたいという深層心理がはたらいたような気がする。『国性爺合戦』も『滝の白糸』もわかりやすくて面白い芝居なので十分に楽しむことができた。そこには深層心理の安堵感もいくぶんあったかもしれない。
◎孝・玉コンビ健在
目当ての『国性爺合戦』『滝の白糸』以上に堪能できたのは、片岡仁左衛門と坂東玉三郎の姿が美しい『於染久松色読販』『神田祭』だった。
私が初めて歌舞伎座で観劇したのは32年前(1986年)の『仮名手本忠臣蔵』で、片岡孝夫と坂東玉三郎の美しさに感動し「これがあの孝夫・玉三郎」かと納得した。
今回の舞台で、その美しいコンビの姿がいまだに健在であることを確認できた。観客である当方は高齢者になっても、同じ年月を経た筈の役者たちが容色を保って一層輝いていることに芝居の世界の不思議を感じる。
歌舞伎座の「三月大歌舞伎」昼の部、夜の部を通しで観劇、午前11時から約10時間かけて次の六つの演目を観た。
1. 国性爺合戦(愛之助、扇雀、芝翫、秀太郎、他)
2. 男女道成寺(雀右衛門、松緑、他)
3. 芝浜革財布(芝翫、孝太郎、他)
4. 於染久松色読販(玉三郎、仁左衛門、他)
5. 神田祭(玉三郎、仁左衛門)
6. 滝の白糸(壱太郎、松也、他)
『芝浜革財布』ので市川中車主演をテレビ中継で観た以外はすべて初見だ。
『芝浜革財布』の元は著名な古典落語で、歌舞伎版ではハッピーエンドのラストシーンで落語とは異なり政五郎が三年ぶりに酒を飲む。ここで飲んではまたアル中に逆戻りするのではと心配になるが、そこが歌舞伎のおおらかさであり、この芝居を祝祭的にしている。
歌舞伎には時事ネタや楽屋オチが挿入されることも多い。今回は『国性爺合戦』と『神田祭』にカーリング姿や「そだねー」が出てきた。祝祭気分になる。
◎『国性爺合戦』と『滝の白糸』に惹かれた
「三月大歌舞伎」の目当ては昼一番の『国性爺合戦』と夜ラストの『滝の白糸』である。どちらも著名な演目なので、生きているうちに一度は観ておくべきだろうと思ってチケットを手配した。
チケットをゲットした後でふいに気づいた。『国性爺合戦』と『滝の白糸』に惹かれたのは記憶の深層のせいだ。これらの芝居のパロディというか別バージョンを若い日に観ていたことをぼんやりと思い出したのだ。古い記録を探索し、次の観劇記録が判明した。
※1975年3月上演『唐版滝の白糸』(作:唐十郎、演出:蜷川幸雄。主演:沢田研二・李礼仙)
※1989年11月上演『野田版国性爺合戦』(作・演出:野田秀樹、主演:桜田淳子・池畑慎之介)
前者は43年前、後者は29年前の芝居だ。観たという記憶がかすかにあるだけで内容は失念している。上演当時、沢田研二は28歳、桜田淳子は31歳。私は沢田研二より1歳下、桜田淳子より10歳上だ。みんな若かった。
上演内容を失念しているので断言はできないが、「唐版」や「野田版」の芝居を観たときにオリジナルを観たいとは思わなかった。前衛的な「唐版」「野田版」で十分に堪能し、オリジナルへの関心はわかなかったのだ。
にもかかわらず、今回の観劇には未見のオリジナルに触れたいという深層心理がはたらいたような気がする。『国性爺合戦』も『滝の白糸』もわかりやすくて面白い芝居なので十分に楽しむことができた。そこには深層心理の安堵感もいくぶんあったかもしれない。
◎孝・玉コンビ健在
目当ての『国性爺合戦』『滝の白糸』以上に堪能できたのは、片岡仁左衛門と坂東玉三郎の姿が美しい『於染久松色読販』『神田祭』だった。
私が初めて歌舞伎座で観劇したのは32年前(1986年)の『仮名手本忠臣蔵』で、片岡孝夫と坂東玉三郎の美しさに感動し「これがあの孝夫・玉三郎」かと納得した。
今回の舞台で、その美しいコンビの姿がいまだに健在であることを確認できた。観客である当方は高齢者になっても、同じ年月を経た筈の役者たちが容色を保って一層輝いていることに芝居の世界の不思議を感じる。
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