スー・チーさんの記者会見でミャンマーの過去・現在・未来を考えた2016年11月05日

 昨日(2016年11月4日)、ミャンマーの国家最高顧問アウン・サン・スー・チーさんの記者会見に出席した。

 私はミャンマーに3回行ったことがあり、この国に関するニュースには関心がある。私がミャンマーを訪問したのは1999年から2007年にかけてで、最後に訪れてから10年近く経っている。当時、スー・チーさんは軟禁状態だった。その後、ミャンマーは大きく変化しつつあり、いまや投資対象の最後のフロンティアとして大きな注目を集めている。

 現在のミャンマーは私が訪れた頃からさま変わりしているが、当時からミャンマーの潜在力は注目されていた。国土は日本の約2倍、人口は日本の約半分、多くの国民は勤勉で親日的だ。国民所得は非常に低く、最貧国のひとつとされていた。

 軍事政権下のミャンマーへの投資は限られていたとは言え、当時からミャンマーに進出している日本企業は少なくはなかった。ヤンゴン郊外にある日本の縫製工場を見学したことがある。交通機関などのインフラが未整備なので従業員の通勤バスも工場で運行している、などという話を日本人の責任者から聞いているとき、会議室の電気が消えた。突然の停電だったが、動じることなく話は続いた。乾期には停電が日常茶飯事だと知り、現地の苦労が了解できた。

 そんな10年近く前の状況は改善し、現地で頑張っていた人々の苦労も報われつつあるのではないかと思われる。当時は軟禁状態だったスー・チーさんが、国家の代表としてミャンマーが抱える課題を語る姿を見ていると、時間の流れを感じざるを得ない。71歳の彼女は容色衰えず貫禄もあり、とても元気そうに見えた。

 ミャンマーは女性が強くてしっかりしている国だ、というのは私がミャンマーを訪れたときの印象だった。今回の記者会見で、女性記者から日本で女性の活躍が遅れている件を訊かれたスー・チーさんの答えが印象的だった。「日本は経済が発展しているにもかかわらず、ジェンダーの問題は解決していない。経済発展が問題を解決するわけではないようだ。なぜなのか、むしろ日本人に訊ねてみたい」

 ミャンマーは今まさに経済成長のとば口に立っている。これから経済が発展するのは間違いないが、どんな経済発展が望ましいか、そのモデルが現在の先進諸国にあるわけではない。これは興味深い困難な課題だ。