『日経サイエンス』の特集は「超能力」!?2014年09月08日

『日経サイエンス』(2014/10)
 『日経サイエンス』の最新号(2014/10)の表紙に大きく「ESP」と書かれている。超常現象を科学的に追究しようとする本を読んだばかりなので、この雑誌も超常現象に注目しているのかと、少しギョッとした。だが、そんな内容ではなく、少し安心し、少しガッカリした。そして、驚いた。

 ESP(Extra Sensory Percerption: 超感覚的知覚)と言えば超能力であり、SFのエスパー(超能力者)を連想する。要はテレパシー、透視、予知などである。『日経サイエンス』の特集記事は、ESPの存在を科学的に解明しようという内容ではなく、現在の科学技術を使って「超能力」を作り出してしまおうという内容だ。こういう着眼点があったのかと驚き、興味深く読んだ。

 インターネットの黎明期、次のようなことが言わていた。

 「蒸気機関が人間の筋肉の力を拡張し、コンピュータが人間の計算能力を拡張したように、ネットは人間のコミュニケーション能力を拡張する」

 かつて、私もネット事業に関わっていた。20年程昔、そのようなことを語ったり書いたりした記憶がある。しかし、その先に「超能力の実現」があるとは思い及ばなかった。自分の想像力の貧困を嘆くしかない。

 『日経サイエンス』の特集は「センサー網が実現するESP」「代替現実で時間をワープ」の2本で構成されている。

 前者は、世界中に張り巡らされたさまざまなセンサーを総合的に利用することによって見えてくる新たな「知覚」を論じている。それは「透視」や「遠隔移動」に似ているが、われわれには未知の「知覚」でもある。

 後者は、パノラマカメラで撮影した映像をヘッドマウントディスプレイ(頭の上半分を覆う装置)を通して見る実験のレポートだ。頭の動きに合わせて映像も動くので、撮影した映像を現実のように感じることができるそうだ。タイトルにある「時間ワープ」は未来ではなく過去へのワープであり、パラマウントカメラで撮影しておけば、その情景をいつでも追体験できるというわけだ。

 特集記事が2本だけなのは少しモノ足りない。科学技術によって作り出すことができそうな「超能力」は他にもいろいろありそうな気がする。

 そんなことを考えていると、われわれが体験している「現実」とは何かという問題が浮かび上がってくる。『「超常現象」を本気で科学する』(石川幹人/新潮新書)でも、生物にとっての「現実」とは「認識」の問題だといった言及があった。超能力を作るということは、脳科学の課題と考えるべきのように思える。脳科学恐るべしとの考えを新たにした。

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