台詞がデタラメでも芝居は成り立つ2023年10月11日

 那覇市安里の「ひめゆりピースホール」という小さな劇場で『カフウムイ:不思議の島の夜の夢』(脚本・演出:扇田拓也、出演:東谷英人、久我真希人、知花小百合、古謝渚、峯井南希、岸野健太)という芝居を観た。

 このホールはひめゆり同窓会館2階にある。エレベーターはない。チラシには住所表記に加えて「栄町市場南口より突き当り」との表示があり、実際、その通りの場所にあった。風情ある路地裏だった。

 この芝居はシェイクスピアの『夏の夜の夢』をガジュマルが茂る沖縄の森に置き換えたファンタジー劇である。沖縄方言で「カフウ」は果報、「ムイ」は森、「カフウムイ」は「果報の森」である。出演者6人が仮面や被り物で何役をもこなす70分の祝祭劇だ。

 芝居が始まる5分前に脚本・演出の扇田拓也氏(演劇評論家の故・扇田昭彦の子息)による解説があった。なぜ解説が必要か、この芝居の台詞がジブリッシュなるデタラメ語なので、その点に関する事前の「おことわり」なのだ。だが、この解説自体がすでに芝居の始まりだったと、開幕直後に気づく仕掛けになっていた。

 パントマイムのように演技だけで意思を伝えることは可能だが、ジブリッシュ芝居は黙劇ではない。役者たちは大声でしゃべり歌う。観客である私は、台詞を聞き取って解釈しようと努力する必要がないので、音楽を聴いているのに近い感覚になる。この芝居の音楽は生演奏で、演奏者(ときに歌う)も舞台上にいる。だから、音楽とデタラメ語台詞が一体化する。私には貴重は観劇体験だった。

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