華麗な芝居『お勢、断行』を観た2022年05月15日

 世田谷パブリックシアターで『お勢、断行』(原案:江戸川乱歩、作・演出:倉持裕、出演:倉科カナ・他)を観た。乱歩の短篇小説に出てくる悪女「お勢」のキャラクターをベースにした倉持裕のオリジナル作品である。

 大正末期の資産家の屋敷を舞台にした犯罪劇で、音楽(斎藤ネコ)が大正ロマンのやや気怠い雰囲気を醸し出している。

 この芝居で目を引いたのは華麗な舞台装置であり、それを駆使した鮮やかな場面転換である。1階と2階という立体的な舞台で、階段が随時せり出してくるので、役者は水平方向と垂直方向に動く。私の客席は2階最前列で、舞台を見下ろす感じになるが、舞台2階の芝居は正面に眺めている案配で何だか得した気分になった。

 ビジュアルは乱歩世界を彷彿させる。だが、ストーリーには物足りなさを感じた。巧くできた物語で、コミカルな部分もあって面白いが、異世界に誘う妖しさがあまりない。ほとんどの登場人物がみな悪人なのはいいが、その悪がストレートすぎていて妖しさが足りない。

 女中役の江口のり子の坦々と悪事に加担する演技には面白さを感じた。

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