いろいろな「ハムレット」2022年03月03日

「戯曲リーディング『ハムレット』より」の観劇に際して『ハムレット』(河出版『世界文学全集』の三神勲訳)を約60年ぶりに再読した。読んでいるうちに、志賀直哉の短編『クローディアスの日記』や太宰治の長編『新ハムレット』を思い出した。そんなイメージと重ねて読み進めると、ハムレットが妄想に取り憑かれた幼くて人騒がせのトンデモ人間にも見えてくる。

 で、『クローディアスの日記』と『新ハムレット』を再読した。前者は書架の古い文学全集に載っていた。後者は手元になく、新たな文庫本を入手した。

 ハムレットは、父王が叔父に殺されたという妄想を抱いている、という設定で、叔父クローディアスの日記形式で綴った『クローディアスの日記』は面白い。殺人者にされたクローディアスが、身勝手で芝居気の強いハムレットに当惑し、呪詛する話である。

 『新ハムレット』の内容はほぼ失念していた。面白かったという記憶は残っている。再読して、太宰治らしい過剰な饒舌に圧倒された。ハムレットに託した現代人(太宰自身?)の心理告白合戦のような小説で、老若対立のドタバタ劇の趣もある。この小説のクローディアスはかなりの悪人だ。

 この文庫本には奥野健男の「解説」がある。それによれば、志賀直哉や太宰治の他に小林秀雄、福田恒存、大岡昇平も『ハムレット』を素材にした魅力的な作品を書いているそうだ。『ハムレット』は、文学者たちにそれぞれ独自の観点と解釈をうながす磁力をもった古典なのだと思う。

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