藝大のスーパークローン技術を体感できる『みろく』展2021年09月17日

 東京藝大美術館で開催中の『みろく ―終わりの彼方 弥勒の世界―』という展覧会に行った。シルクロードの各地にある弥勒像を一堂に集め、弥勒信仰の起源と変遷をたどる企画である。ガンダーラ、バーミアン、敦煌、法隆寺金堂壁画などの弥勒を展示している――と言っても、展示物の大半は実物ではなく藝大の「スーパークローン技術」で現物を復元したものである。

 スーパークローン技術とは、3Dカメラなどの最新デジタル技術と緻密な職人技を駆使して文化財を復元する技術で、その出来栄えには目を見張らされる。

 今回展示されている復元文化財には、敦煌莫高窟275窟の交脚弥勒菩薩のように現存するものを復元したものもあるが、すでに失われた文化財の復元が多い。

 20年前タリバンによって破壊されたバーミアンの文化財も2点復元されている。バーミアン東大仏仏龕天井壁画「天翔ける太陽神」とバーミアンE窟仏龕天井壁画「青の弥勒」である。どちらも湾曲した天井や壁を含めた立体を原寸大で復元した大きなもので、一見の価値がある。

 また、1949年に火災で焼損した法隆寺金堂壁画の第9号壁「弥勒説法図」もスーパークローン文化財として復元されてる。

 スーパークローン技術は、単に文化財を現物通りに復元できるだけではない。退色したり欠損した文化財を制作時の状態に近づける「想定復元」も可能である。法隆寺金堂の「弥勒説法図」は焼失前の状態を再現した壁画の隣りに、色や図柄をより鮮明にした想定復元図も展示していた。この2点を並べて眺めると、時間を遡っていくような感覚になる。

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