『たまのののののちゃん』に『ROKA』スピンオフ作品が…2026年01月30日

『たまのののののちゃん』(いしいひさいち/蜻文庫)
 マスコミに顔写真などを公開しないマンガ家いしいひさいちは岡山県玉野市出身で、私と同郷だ。私よりは三歳下で、彼が出た玉野高校に、私は1年の1学期まで通った。1年の2学期からは、東京の高校へ転校し、私はそれから半世紀以上東京暮らしである。

 15歳まで暮らした玉野市は遠い記憶の彼方に霞んでいるが、玉野市をモデルにした「たまのの市」のアレコレに触れるとなつかしくなる。

 先日読んだ『ROKAコンプリート』は、「たまのの市」出身のファド歌手・吉川ロカを描いた物語マンガだった。ネットでこのマンガを注文したとき、次のローカルなマンガ単行本があると知った。

 『たまのののののちゃん』(いしいひさいち/蜻文庫)

 朝日新聞連載の『ののちゃん』とはビミューに異なり、セリフは「きちゃねえ」岡山弁になっている。出版社は『まぁ映画な、岡山じゃ県!』(これは3作まである)を出した岡山県の蜻文庫(あきづぶんこ)である。いしいひさいちファンがいしいひさいち作品出版のために立ち上げたユニークな地方出版社だ。

 本書には『たまのののののちゃん』以外の作品も収録している。メインの4コママンガ『たまのののののちゃん』は「広報たまの」に連載したものだそうだ。玉野市の人にしかわからないと思われるローカルな地名(田井、荘内、金甲山、渋川、和田、日比など)が出てきたりして、なつかしさがこみあげてきた。

 登場人物は朝日新聞の『ののちゃん』とほぼ同じで「たまのの駅前将棋センター」も登場する。5年前、この「たまのの」と本物の「玉野市」が新聞紙面で横並びになっているのを発見したことを思い出した。

 驚いたことに本書は「伝・大森孫左衛門:柴島商會物語」という『ROKA』のスピンオフ作品を収録している。4コマないし8コマで6ページの書下ろしである。小品かもしれないが「物語」と銘打つだけの奥行を感じる作品だ。吉川ロカを支援する不良少女・柴島美乃の祖父が経営する柴島商会の草創期の話である。祖父は貧しい新婚生活で、時代は終戦直後の雰囲気だ。当時の祖父の姓は柴島ではなく大森である。だから「伝・大森孫左衛門」なのだ。それがなぜ「柴島」になったのか……。

 わずか6ページのエピソード集に背後の大河ドラマを感じた。