三島由紀夫を語る村松英子と宮本亜門の対談が面白い2025年02月03日

 今年は三島由紀夫生誕100年である。生きていれば、2025年1月14日が百歳の誕生日だった。この日、「三島由紀夫生誕百年のつどい」というイベントが開催されたそうだ。Youtube で視聴できると知り、2時間半のこの番組を視聴した。

 私は憂国忌に関心はないが、三島由紀夫は同時代性を感じる気がかりな作家である。3つの講演と1つの対談からなるこのイベントは面白かった。全般に、三島の死を政治的な死ではなく文学的な死と見なしている。その通りだと思うが、その文学的な死を神話に昇華させる見解には少し驚いた。

 最も興味深かったのは、三島の演劇について語り合う村松英子と宮本亜門の対談である。舞台背景には、60年前(1965年)に撮影した村松英子と三島由紀夫のツーショット写真を投影している。登壇したた村松英子は86歳である。その元気な姿に感嘆した。

 村松英子は三島の友人・村松剛の妹で、三島の戯曲によって育てられた女優である。私は18年前(2007年)、彼女が演出・主演した『薔薇と海賊』を観た。彼女の舞台を観るのはそれが初めてだった。おそらく最後だと思う。

 宮本亜門は『金閣寺』『午後の曳航』などの小説を舞台化している。私は2016年に彼が演出した『ライ王のテラス』を観た。今年は『サド侯爵夫人』に挑戦するそうだ。楽しみである。

 二人の対談は、宮本亜門が村松英子から三島の思い出を聞くという形で進行した。多くの小説や戯曲を書き、自身の戯曲だけでなく生き方や死に方までも演出した三島由紀夫という人物は、やはり興味深い。

 三島が、シェイクスピアの悲劇を男中心の新国劇として敬遠したという話は面白い。ボディビルで鍛えた肉体は、実は物を持ち上げたりする力はないとも語っていたそうだ。精神と肉体の二元論に拘泥し、肉体の側に立つことをよしとした三島の愉快なエピソードだ。

 『鏡子の家』のモデルに関する村松英子の話も興味深かった。いままで鏡子のモデルとされてきた人物は、本人がそう主張しているにすぎず、その人物の妹が本当のモデルだそうだ。村松英子の兄・村松剛が書いた『三島由紀夫の世界』も間違えた人物をモデルとしていた。

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