歌舞伎座「夜の部」の舞台は近代と古代(近世でない)2024年10月13日

 歌舞伎座で錦秋十月大歌舞伎の夜の部を観た。演目は以下の通り。

  婦人系図(おんなけいず)
    本郷薬師縁日
    柳橋柏家
    湯島境内
  源氏物語
    六条御息所(ろくじょうみやすどころ)の巻

 泉鏡花の『婦人系図』が新派の有名作だとは知っていたが、私は新派を観たことはない。今回は仁左衛門と玉三郎の『婦人系図』である。このコンビをいつまで観られるかはわからないので、観なければと思った。

 新派という独特のレトロな雰囲気もたまにはいい。「切れろ、別れろは芸者のときにいう言葉。今の私にゃ死ねと云ってください」という有名台詞をナマで聞くことができて満足した。歌舞伎座の舞台はダイジェスト上演だが、この芝居はフルバージョンで観たいと思った。

 源氏物語は新脚本だそうだ。玉三郎監修の舞台で、六条御息所を玉三郎、光源氏を染五郎が演じる。十二単の平安王朝絵巻の舞台は、やはり絵になる。

 私は現代語訳でも源氏物語を読んでいない。かなり昔に読んだダイジェスト本の内容も失念している。だが、六条御息所の巻は三島由紀夫の『近代能楽集」の『葵上』(ベースは能の葵上)の話なので、多少の親しみがある。『近代能楽集」の『葵上』は、何年か前に美輪明宏主演で観たことがある。

 当然ながら美輪明宏の舞台と玉三郎の舞台はかなり異なる。歌舞伎座の舞台に不気味さは少ない。ハッピーエンド風なのが、とってつけたようだ。