100年以上昔の芝居に英国風を感じた2024年10月23日

 わが家から徒歩30分のせんがわ劇場で『ドクターズジレンマ』(作:バーナード・ショー、翻訳:小田島創志、演出:小笠原響、出演:佐藤誓、大井川皐月、他)を観た。

 19世紀から20世紀にかけての高名な文学者バーナード・ショーの作品を読んだことはない。ノーベル文学賞受賞者で多くの戯曲を書いたそうだが、その演劇を観たこともない。100年以上前にロンドンで初演された『ドクターズジレンマ』も初耳である。

 今回の戯曲は小田島創志氏による新訳だそうだ。チラシを見てもどんな話かよくわからない。近所の劇場での上演であり、バーナード・ショーはどんな芝居を書いているのか興味がわき、チケットを購入した。

 せんがわ劇場は客席百数十の小さな劇場である。以前に観劇したレイアウトとはかなり違っていた。舞台は台形で、それを囲む三方に客席をしつらえている。正面は2列、左右は7列だ。役者は四方から出入りする。客席と舞台が近いのがいい。役者の熱気が直に伝わってくる。稽古場で芝居を観ているような気分になる。

 2時間30分(休憩10分を含む)の芝居だった。6人の医師と若くて貧しい画家夫婦の話である。主人公はナイトの称号を得た高名な医師である。多忙なので新たな患者は受け付けない。そこに、画家の妻が結核の夫の診察を依頼に来る。医師は若い妻の魅力に惹かれて診察を受諾するが――というのが話の発端である。

 当初はコメディかなと思っていたが、そうでもない。シリアスとも言えない。100年以上前の英国の風俗習慣がわからないので、目の前のシーンが誇張なのかリアルなのか判断し難くなったりもする。

 エリート医師たちは患者が死ぬのは仕方ないと考えているようだ。患者を何人殺したかがステータスと思っているフシもある。作者のアイロニーだろう。観劇を終えて、この芝居は皮肉な悲喜劇だと思った。そして、これが英国風か、と感じた。

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