中沢新一氏の熱気にあふれた『100分de名著 野生の思考』2024年10月19日

『100分de名著 野生の思考』(中沢新一/NHK出版)
 『野生の思考』に目を通したものの消化不良なので関連書を検索した。100分de名著のテキストを見つけ、ネット書店で購入した。

 『100分de名著 野生の思考』(中沢新一/NHK出版)

 2016年12月号とある。8年前に放映された番組のテキストだ。8年前のテキストをまだ新本で販売しているのに驚いた。100ページ強の分量だから短時間で読了できた。

 このテキストを通読し、『野生の思考』読解のための解説本というよりは派生本に近いと感じた。もちろん、読解の手助けにはなる。

 100分de名著は25分4回の番組である。本書は次のような構成になっている。

 第1回 「構造主義」の誕生
 第2回 野生の知財と「ブリコラージュ」
 第3回 神話の論理へ
 第4回 「野生の思考」は日本に生きている

 第1回は『野生の思考』を読む準備としてのレヴィ=ストロースの紹介である。事前に、この程度のことは把握しておくべきだったと悟った。

 第4回は『野生の思考』刊行後にレヴィ=ストロースが何度も来日した話の紹介が中心で、『野生の思考』が提示した思想の新たな展開を論じている。

 というわけで、『野生の思考』の内容にに即した解説は第2回と第3回である。第3回の後半は『野生の思考』とは別の論文『火あぶりにされたサンタクロース』に関する話になっている。

 『野生の思考』に目を通した直後にこのテキストを読んだので、本文に直結した読解的な部分が意外に少ないと感じた。期待した解説本とはややズレているが、『野生の思考』を最大級に評価する中沢新一氏の熱気は伝わってくる。

 このテキストの「はじめに」で、中沢氏は19世紀の『資本論』に匹敵する起爆力をもった20世紀の本が『野生の思考』だとし、次のように述べている。

 「この本は、いまだ完全には読み解かれていない、これから新しく読み解かれるべき内容をはらんだ21世紀の書物です。」

 また、テキストの末尾では次のように語っている。

 「一筋縄ではいかない、強靭な知性によって書かれたとても難しい本ですが、そこには、日本人がこれからどうやって自分たちの世界をつくっていったらよいかを考えるためのたくさんのヒントが埋め込まれたいます。」

 たかだか100分で読み解けるような本ではない、ということである。

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