福田善之92歳の新作芝居を観た2024年02月03日

 下北沢の駅前劇場でサルメカンパニー公演『文明開化四ッ谷怪談』(作:福田善之・井村昴、演出:石川湖太郎、出演:石川湖太郎、井上百合子、他)を観た。1月に予定していた観劇を急用でキャンセルしたので、今年初めて観る芝居だ。

 この芝居を観ようと思ったのは、新聞記事で92歳の福田善之の新作と知ったからである。半世紀以上昔の学生時代、福田善之という劇作家は気になる存在だった。しかし、その作品を観る機会がないままに時間が経過した。新聞記事で久々にこの劇作家の名に接したとき、時間の彼方から亡霊が現れたような驚きを感じた。

 それにしても、92歳での新作はスゴイ。それを上演するのがメンバー20代の若手劇団とは頼もしい。28歳の演出家と92歳の劇作家のコラボ――何だか、これからの時代の姿の何かを現しているように感じる。それは、私が高齢者だからか。

 この新作は西南戦争の頃を舞台に、変節・裏切り・大儀などのテーマを提起している。主人公の名は伊右衛門で、鶴屋南北の四谷怪談の伊右衛門の人物像を反映させている。この主人公は南北の四谷怪談のファンという設定だが、四谷怪談とはかなり違う物語になっている。幽霊も登場しない。幽霊が出てこないことろがミソになっている。

 戊辰戦争→西南戦争という歴史変動の時代に福田善之が体験した敗戦→戦後史と現代世界の状況を投影したような芝居だった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
ウサギとカメ、勝ったのどっち?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://dark.asablo.jp/blog/2024/02/03/9656272/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。