二人芝居『建築家とアッシリア皇帝』は濃厚で熱い2022年11月28日

 世田谷パブリックシアターのシアタートラムで『建築家とアッシリア皇帝』(作:フェルナンド・アアラバール、演出:生田みゆき、出演:岡本健一、成河)を観た。山崎努の『私の履歴書』でこの芝居に関心を抱いた経緯は先日のブログに書いた。今回の公演のパンフレットには山崎努の『私の履歴書』を抜粋転載していた。稽古場を訪れた“初代アッシリア皇帝”山崎努の写真も載っている。

 15分の休憩をはさんで2時間50分の二人芝居、熱量の高い激しい舞台である。原始人(建築家)が一人で住む孤島に飛行機が墜落、ただ一人の生き残りの文明人(アッシリア皇帝)と原始人との二人が繰り広げる「芝居ゴッコ」の芝居である。休憩時間も舞台上では「芝居ゴッコ」が継続していた。

 この芝居は不条理演劇の一つと言われているそうだ。ベケットや別役実の世界とはかなり異なり、マルケスのマジックリアリズムの世界に通じるものも感じた。濃厚な舞台である。

 事前に戯曲を読んでいたが、今回の上演は私が読んだ翻訳とは別の訳者で、上演台本は当世風にアレンジしている。戯曲だけではイメージしにくい気違いじみた不条理な展開も、役者の肉体を通すと親しみやすい光景になり、不思議世界が眼前に浮かび上がってくる。役者の肉体でしか表現できない、戯曲だけでは把み難い世界である。

 それにしても、実に多様なものを「芝居ゴッコ」芝居に詰め込んだものだと思う。人類史と個人史の深層意識を脈絡を無視して盛り込んだ感じだ。世界とは「芝居ゴッコ」の二人芝居で成り立っている――そんな妄想がわいてくる。

 この孤島舞台の二人芝居、チラシのようなスーツ姿で演じるわけではない。Webページに舞台写真が公開されている。

〔蛇足〕この芝居の開演のとき、客席が薄暗くなり舞台が明るくなり、ふたたび客席が明るくなった。変わった趣向だなと思っていると、舞台そでに人が出てきて「ただいま瞬間的な停電がありました。点検後に開演します」と言った。それも芝居かなと思ったが、本当にトラブルだった。開演は15分遅れた。