1992年のTV番組『大モンゴル』の書籍を入手2021年12月10日

『大モンゴル1:蒼き狼チンギス・ハーン』(NHK取材班編/角川書店)
 杉山正明氏は 『大モンゴルの世界』 の文庫版あとがきで、NHKとBBS共同制作の番組『大モンゴル』にかかわった思い出を語っている。自信作らしいが、私はこの番組を見ていない。1992年に5回にわたって放映、その 第1回の冒頭部分はウェブで視聴できるが、NHKオンデマンドには入ってない。いつの日かの再放送を待つしかない。

 ネット検索でこの番組を書籍化したものを見つけ、古書で入手した。ムック風の大判全4冊で、第4巻は写真集だった。第1~3巻に5回の番組内容を収録している。その第1巻は、番組の第2集『蒼き狼チンギス・ハーン』である。

 『大モンゴル1:蒼き狼チンギス・ハーン』(NHK取材班編/角川書店)

 番組に対応した本文とは別に、作家や学者の文章8編を収録している。それぞれの見解と番組内容に多少のズレがあるのが興味深い。歴史の面白さである。

 チンギス・ハーンの生涯を追った番組の取材先はモンゴル、中国、ウズベキスタンなどだ。番組の取材は1990年から1991年にかけてで、ソ連崩壊の時期に重なる。モンゴルが「モンゴル人民共和国」から「モンゴル国」に改称したのは1992年であり、ウズベキスタン独立は1991年である。変動の時代の雰囲気が取材記の行間から伝わってくる。

 ソ連の影響力が強かった時代、モンゴルではチンギス・ハーンは「禁じられた英雄」だった。だが1990年には復活し、チンギス・ハーン像も建てられた。番組はその除幕式の様子を伝えている。ソ連崩壊という現代史の転換期だから『大モンゴル』という番組を企画したのかもしれない。

 この巻で興味深いのは、チンギス・ハーンの参謀だった契丹人・耶律阿海に注目している点である。有名な耶律楚材とはまったくの別人で、楚材よりずっと以前からテムジン(後のチンギス・ハーン)に仕え、楚材よりはるかに高い地位についた人物である。

 人材登用に積極的だったモンゴルは、契丹人の耶律阿海をはじめ多様な人種で成り立ち、高度な情報収集力をもっていた。チンギス・ハーンの「侵略」は周到な事前調査調査に基づいたものだった。そんな指摘が新鮮に感じられた。

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