山田風太郎の奇怪な忠臣蔵を読んだ2024年12月30日

『妖説忠臣蔵』(山田風太郎/集英社文庫)、『忍法忠臣蔵』(山田風太郎/講談社)
 『元禄忠臣蔵』に続いて『うろんなり助左衛門』を読み、未読の忠臣蔵本が気がかりになり、本棚に眠っていた次の2冊を読んだ。

 『妖説忠臣蔵』(山田風太郎/集英社文庫)
 『忍法忠臣蔵』(山田風太郎/講談社)

 2冊とも奇想の作家・山田風太郎のかなり古いエンタメ小説である。

 短編集『妖説忠臣蔵』には「赤穂飛脚」「殺人蔵」「蟲臣蔵」「俺も四十七士」「生きている上野介」の5編を収録している。どれも、それぞれに面白い。

 ドンデン返しミステリーの「生きている上野介」は討入り後に世間から蔑まれる脱盟者らの鬱屈を表現して秀逸だ。「俺も四十七士」は四十七士でありながら無名に近い人物の哀感に焦点をあてた皮肉小説である。

 長編『忍法忠臣蔵』は山田風太郎忍法全集の1冊である。荒唐無稽な忍法に頭がクラクラしてくる。風太郎の独壇場だ。上杉の家老千坂兵部が、赤穂浪士を女色に溺れさせて仇討ちを骨抜きにしようと、女忍者たちを放つ話である。闊達なエロ・グロ・ナンセンンスの奇怪な世界が繰り広げられる。「忠義が嫌い」とうそぶく伊賀忍者を主人公にしている所に作者の反骨を感じる。