海運に焦点をあてた十字軍の概説書を読んだ2024年06月23日

『十字軍と地中海世界』(太田敬子/世界史リブレット/山川出版社)
十字軍に関する次のブックレットを読んだ。

『十字軍と地中海世界』(太田敬子/世界史リブレット/山川出版社)

 先日読んだ『フリードリヒ2世』(藤澤房俊)に、本書を引用した記述があった。

 〔破門を受けた皇帝が、教皇の意思に逆らって、十字軍を率いて聖地に赴いた例はなかった。太田敬子によれば「フリードリヒ二世の十字軍は、歴代の十字軍のなかでもっともプロフェッショナルな、そして注意深く計画された遠征であった」。〕

 交渉によって無血でイェルサレムを奪還した十字軍が、用意周到なプロの軍団だったことの事情や効果をもう少し詳しく知りたいと思い、本書を入手した。

 本書は海運にウェイトを置いた十字軍の概説書である。大量の物資の海上移動がなければ十字軍の継続も十字軍国家の維持もできなかった。本書によって馬専用の馬匹輸送船なるものを初めて知った。帆船とガレー船の機能の違いもよくわかった。

 興味深い事項が多いが、薄い本に十字軍200年の歴史を詰め込んでいて、頭の中がゴチャゴチャしてくる。3年前に塩野七生氏の『十字軍物語』を読み、ある程度は十字軍を知っている気がしていたが、その内容はすでに蒸発していた。このブックレットを読了したとき、知識整理のためにもう一度読み返さなければ、という気分になった。

 フリードリヒ二世の十字軍に関しては、周到な戦闘準備の船団で出発したのは確かだが、到着したときには十分な戦闘態勢を整えることはできなかったそうだ。到着の遅れで先発隊の多くが帰還し、破門のせいでヨハネ騎士団、テンプル騎士団が離反したからである。無血奪還が周到な戦闘態勢と関係したか否かはよくわからない。

 本書で驚いたのは十字軍がパレスティナに作った港湾都市アッコの繁栄である。13世紀初頭、イスラムにイェルサレムを奪い返された後も交易で大きな利益をあげていたそうだ。当時のアッコの歳入はイングランド王国全土の歳入に匹敵したという。「花の第三回」と言われたる十字軍のリチャード獅子心王の本国と小さな港湾都市が遜色ないのが意外だ。あらためて「交易」という経済活動の重要性を感じた。

 著者は「戦争によって交易が妨げられることはまれで、キリスト教商人もムスリム商人も戦争とはかかわりまく取引をおこなった」と述べている。

 十字軍が交易を促進したという側面があるが、交易で暮らす人々にとって十字軍は迷惑な存在だったようだ。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
ウサギとカメ、勝ったのどっち?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://dark.asablo.jp/blog/2024/06/23/9695344/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。