『図説ロシアの歴史』を再読し、おのれの読み過ごしを知った2023年06月28日

『図説ロシアの歴史』(栗生沢猛夫/ふくろうの本/河出書房新社)
 河出の図説シリーズ「ふくろうの本」の『図説バルカンの歴史』『図説ハンガリーの歴史』を読んだので、その記憶が霧消する前に『図説ロシアの歴史』も読んだ。東欧史の全体像を多少なりとも把握できればと考えたのだ。

 『図説ロシアの歴史』(栗生沢猛夫/ふくろうの本/河出書房新社)

 この本、実は再読である。6年前にロシア旅行したとき、その事前準備気分で読んでいる。内容はほとんど憶えていない。今回読み返して、歴史の本は一回読んだだけでは頭に定着しないとよくわかった。

 本書は初版2010年5月、増補新版2014年10月である。巻末7頁の「その後のロシア」が増補部分で、2010年から2014年までを概説している。

 ロシアのウクライナ侵攻は本書の増補新版が出てから約7年後の2022年2月である。だが、本書は随所でロシアとウクライナの問題に触れている。

 冒頭に近い「第2章 キエフ・ロシア(キエフ大公国)」において、ロシアとウクライナの歴史学者の見解の違いを紹介している。その後、ウクライナがロシアと別の道を歩んだり、ロシア支配下で独立を画策したことにも触れている。そして、2014年のクリミア併合直後に書かれた増補部分の大半は「ウクライナ危機」の概説である。著者は将来への強い懸念を表明している。

 いま、本書を読み返すと、ロシアとウクライナの問題の由縁と深刻な情況がよくわかる。しかし、6年前に本書を読んだ私は、そんな問題をほとんど読み過ごしていた。本書を読んだ直後のロシア旅行(モスクワとサンクトペテルブルグ)の折にも、ウクライナのことをほとんど想起しなかったと思う。

 いくら読書をしても、おのれの関心に触れ合ってない事項は頭に残らず、読んでいないのとさほど変わらない――本書を再読し、つくづくそう感じた。

 ウクライナへ関心がわいたのは2022年2月の侵攻以降であり、その直後に『物語ウクライナ史』を読んだ。そのとき、ロシアとウクライナの歴史の見方の違いを知って面白く感じた。その5年前に読んだ本書にそんな指摘があったことはまったく失念していたのである。