ハンガリーの古代から現代までを一気に辿った2023年06月26日

『図説ハンガリーの歴史』(南塚信吾/ふくろうの本/河出書房新社)
 先日読んだ『図説バルカンの歴史』はハンガリーを含めていなかった。それを補完するため、同じシリーズのハンガリー史を読んだ。

 『図説ハンガリーの歴史』(南塚信吾/ふくろうの本/河出書房新社)

 ウラル山脈南部にいたマジャル人が西進し、カルパチア盆地を征服・建国した10世紀からNATO加盟(1999年)、EU加盟(2004年)を経て2011年に至るまでの通史概説である。建国以前の古代から、中世、近代、現代と一気に辿ると頭が疲れる。だが、断片的だったバラバラな知識がある程度は整理され、この国への関心が少し増した。

 ハンガリーはフン族に由来するアジア系という話を聞いたことがあるが、フン族説は現在では否定されているそうだ。

 他の多くの国と同じようにハンガリーの領域は時代によって異なる。民族や国民は近代以降の概念だし、かつては国境線などは明確でなかった。人間の固まりが離合集散、支配被支配を繰り返していたのだから、陸続きの国の境界や歴史はわかりにくい。

 本書を読んであらてめて感じたのは、ビザンツ史、モンゴル史、オスマン帝国史、ハプスブルク帝国史をきちんと把握することの必要性だ。ハンガリーの歴史は、これら周辺勢力と密接に関連している。視点をアレコレ変えながら歴史を眺めると、新たな景色が見えてくると思う。

 私が最も興味深く読んだのは第一次大戦以降の現代史である。ナチス・ドイツとの関わりに始まり第二次大戦後のソ連との関連を経てグローバル化の現代に至る約100年の歴史は、波乱万丈の大河小説のようだ。この転変の時代を生きた親子孫三代の物語にすれば、現代史のさまざまな情景や課題を反映した面白いドラマになるかもしれない。