橋元時間論の集大成『光速・時空・生命』の最終章は壮大なSF2025年01月20日

『光速・時空・生命:秒速30万キロから見た世界』(橋元淳一郎/インタナショナル新書・集英社インターナショナル)
 書店の棚で本書を見つけ、すぐに購入した。昨年(2024年)10月に出た新書だ。

 『光速・時空・生命:秒速30万キロから見た世界』(橋元淳一郎/インタナショナル新書・集英社インターナショナル)

 私はこれまでに橋元氏の時間に関する本を何冊か読んでいる。『時間はどこで生まれるか』『時間はなぜ取り戻せないのか』、『時空と生命』『空間は実在するか』などである。時間は生命現象によって発生したとする橋元時間論にはセンス・オブ・ワンダーがあり、魅せられた。

 と言っても、私が橋元氏の言説を十分に理解できているわけではない。いつの日か、ゆっくり読み返して理解を深めたいと思っていた。だから、書店で新刊を発見したとき、橋本時間論を復習して多少なりとも理解を深める機会だと感じたのである。

 本書は相対論の解説をメインに光速の不思議を解説し、速度とは何かの検討を通して時間と生命を考察している。後半はかなりSFに近くなる。

 昔読んだ橋元時間論の内容の大半は失念しているので、あらためて「ヘェー」と感じながら本書を読み進めた。フワーッとしか理解できない広遠な思考実験を再体験し、遠い世界を旅した気分になった。

 物理学における「時間」とわれわれが感じている「時間」は、似て非なるものである。物理の時間には「流れ」がない。時間の流れを創るのは生命である、というのが本書のテーマだと思う。「速度」や「動く」という現象への考察も面白い。これらは物理現象というよりは生命が創り出すものだそうだ。光速はモノの動く速さではなく、この宇宙の壁だという指摘にナルホドと感じた。もちろん、十分に咀嚼できたわけではないが。

 著者は、本書の目論見は新たな科学的真理の構築などではなく、SF思考実験だとしている。そして、最終章は「百兆年の旅路」と題するSF的思考実験空想譚になっている。ユニバースではなくマルチバースの宇宙を旅する壮大なSFだ。

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