『砂糖の世界史』で蒙を啓かれた ― 2024年09月27日
次の岩波ジュニア新書を読んだ。
『砂糖の世界史』(川北稔/岩波ジュニア新書)
発行は28年前の1996年7月。私が読んだのは2023年4月の44刷だ。ロングセラーである。蒙を啓かれる面白い本だった。
今年の春、Eテレで放映した『3か月でマスターする世界史』の講師・岡本隆司氏の『世界史序説』で本書を知った。岡本氏は本書を、ウォーラーステインの世界システム論を祖述・発展させた不滅の業績と評価し、次のように紹介している。
「『砂糖の世界史』が描くところは、世界最高水準の世界経済史像であって、それが高校生にでもわかる平易な日本語で読めるのは、後学の至福だといってよい。」
こんな紹介を読めば、読まねばならない気分になる。
砂糖をめぐる世界史は、植民地の大規模農園プランテーション発生の歴史であり、奴隷制度の歴史であり、大西洋での三角貿易の歴史であり、産業革命の歴史である。「砂糖のあるところに奴隷あり」という言葉を初めて知った。製糖業の発展が奴隷制度と表裏一体だったと知り、認識を新たにした。
また、イギリスにおける紅茶の普及と砂糖が密接に関係し、それが産業革命に絡んでいることも知った。2年前に入手した高校世界史の図解副読本『最新世界史図説 タペストリー』巻頭の「読み解き演習」に「イギリスにおける紅茶の普及」という見開きページがあったのを思い出した。貴族が紅茶を飲む18世紀前半の絵画と労働者が紅茶を飲む19世紀後半の絵画を比較・考察するページだった。本書によって、あの考察への理解が深まった。
『最新世界史図説 タペストリー』をよく見ると、監修者の一人は『砂糖の世界史』の著者・川北稔氏だ。川北氏はウォーラーステインの大著『近代世界システム』の翻訳者でもある。私はこの大著に挑む元気はないが、世界史システム論の考え方の一端に触れることができた。
著者は「あとがき」で「この本は「世界システム」論といわれる歴史の見方と、歴史人類学の方法を使って書いてみました」と述べている。歴史人類学とは、モノや慣習などを通じて歴史上の人々の生活の実態を調べる学問だそうだ。確かに、砂糖などのモノに着目すれば、歴史の実態に触れたような気分になる。
本書は日本における砂糖の歴史にも言及している。私は10年前にサイパン旅行をしたとき、サイパンの歴史を少し調べた。そのとき、海の満鉄と呼ばれた南洋興発という会社を知った。製糖業で発展した会社である。本書を読みながら南洋興発への言及があるかと期待したが、そこまで筆は及んでなかった。
『砂糖の世界史』(川北稔/岩波ジュニア新書)
発行は28年前の1996年7月。私が読んだのは2023年4月の44刷だ。ロングセラーである。蒙を啓かれる面白い本だった。
今年の春、Eテレで放映した『3か月でマスターする世界史』の講師・岡本隆司氏の『世界史序説』で本書を知った。岡本氏は本書を、ウォーラーステインの世界システム論を祖述・発展させた不滅の業績と評価し、次のように紹介している。
「『砂糖の世界史』が描くところは、世界最高水準の世界経済史像であって、それが高校生にでもわかる平易な日本語で読めるのは、後学の至福だといってよい。」
こんな紹介を読めば、読まねばならない気分になる。
砂糖をめぐる世界史は、植民地の大規模農園プランテーション発生の歴史であり、奴隷制度の歴史であり、大西洋での三角貿易の歴史であり、産業革命の歴史である。「砂糖のあるところに奴隷あり」という言葉を初めて知った。製糖業の発展が奴隷制度と表裏一体だったと知り、認識を新たにした。
また、イギリスにおける紅茶の普及と砂糖が密接に関係し、それが産業革命に絡んでいることも知った。2年前に入手した高校世界史の図解副読本『最新世界史図説 タペストリー』巻頭の「読み解き演習」に「イギリスにおける紅茶の普及」という見開きページがあったのを思い出した。貴族が紅茶を飲む18世紀前半の絵画と労働者が紅茶を飲む19世紀後半の絵画を比較・考察するページだった。本書によって、あの考察への理解が深まった。
『最新世界史図説 タペストリー』をよく見ると、監修者の一人は『砂糖の世界史』の著者・川北稔氏だ。川北氏はウォーラーステインの大著『近代世界システム』の翻訳者でもある。私はこの大著に挑む元気はないが、世界史システム論の考え方の一端に触れることができた。
著者は「あとがき」で「この本は「世界システム」論といわれる歴史の見方と、歴史人類学の方法を使って書いてみました」と述べている。歴史人類学とは、モノや慣習などを通じて歴史上の人々の生活の実態を調べる学問だそうだ。確かに、砂糖などのモノに着目すれば、歴史の実態に触れたような気分になる。
本書は日本における砂糖の歴史にも言及している。私は10年前にサイパン旅行をしたとき、サイパンの歴史を少し調べた。そのとき、海の満鉄と呼ばれた南洋興発という会社を知った。製糖業で発展した会社である。本書を読みながら南洋興発への言及があるかと期待したが、そこまで筆は及んでなかった。
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