『哲学は資本主義を変えられるか』は読みやすい2023年03月24日

『哲学は資本主義を変えられるか:ヘーゲル哲学再考』(竹田青嗣/角川ソフィア文庫)
 私は哲学を敬遠している。にもかかわらず次の本を読んだ。

 『哲学は資本主義を変えられるか:ヘーゲル哲学再考』(竹田青嗣/角川ソフィア文庫)

 この本を読んだのには事情がある。本書の著者・竹田青嗣氏の新著『新・哲学入門』(講談社現代新書)を読みかけたが、歯ごたえがあって進まない。そんなとき、書店で本書を見つけ、こちらの方が読みやすそうに思え、まず本書から読むことにしたのだ。

 そもそも、なぜ『新・哲学入門』を読みかけたのか。この正月にLINEがつながった学生時代の古い友人から「モヤモヤが解消された。感想を聞きたい」とのメッセージが来たからである。遠方在住で数十年会っていない友に、学生時代のノリで「読む」と返信してしまった。

 予習気分で読んだ本書、かなりわかりやすく、論旨も明解に思えた。とは言え、やはり難解な箇所がいくつかあり、十全に理解できたとは言えない。哲学の人の抽象的思考について行くのは大変である。

 サブタイトルに「ヘーゲル哲学再考」とあるように、本書はヘーゲルの再評価であり、それを援用した「反・反近代社会」「反・反資本主義」の書である。近代や資本主義を批判的に捉えるポストモダン思想では未来を拓けないとしている。

 本書の論旨の要約は私には難しい。著者は「あとがき」で次のように述べている。

 「長く人々の一縷の希望となっていた国家や資本主義の廃絶という展望が、そもそも不可能なこと、あるいはもっと悲惨な結果しかもたらさないようなことであるなら、われわれはできるだけ早く、この希望を断念したほうがよい。(…)人間的「自由」の可能性の唯一の原理は、国家=権力の廃絶ではなく、むしろ、人民権力=市民国家の設立ということだけである。(…)権力の正当性とその適切な制御ということが問題なのである。」

 これだけを読むと存外あたりまえの事を述べているように思える。だが、結論に至るまでの哲学的な考察はかなりダイナミックで頭の刺激になった。カント、ホッブス、ルソー、ヘーゲル、マルクスなどを要領よくさばいている。彼らの著作をまともに読んでいない私には勉強になった。

 私には、著者の主張の妥当性を判断できる能力はない。終章の「希望の原理はあるか」は、哲学的考察というよりは具体的な現代社会論がメインになる。この部分がモノ足りなく思え、本書全般が竜頭蛇尾にも感じられた。哲学の部分には勢いがあり、経済学・社会学になると少し萎えてくる。哲学者の本だからか。

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