世界劇団の『天は蒼く燃えているか』を観た2022年03月11日

 せんがわ劇場で世界劇団の『天は蒼く燃えているか』(原作:芥川龍之介「アグニの神」より、脚本・演出・振付:本坊由華香子)を観た。私にはまったく未知の劇団の芝居である。

 チラシを見て、この芝居を観る気になったのは、芥川龍之介の短い童話をどう料理するかが気になり、愛媛大学医学部の演劇部が母体という劇団に興味がわいたからである。上演劇場がわが家に近い(徒歩で30分、電車で行っても30分弱)のも魅力だった。

 「世界劇団」という大層な命名に意気を感じる。たしかに世界把握をテーマにした舞台だった。芥川龍之介の童話「アグニの神」がモチーフだが、より広がりのある別世界の多重的な舞踏劇になっている。原作のような上海の一角の話ではなく、「東のはずれの、ある島」の話になっている。島という言葉は何度か繰り返される。それは日本を暗示しているだけでなく、世界の暗喩である。

 この芝居、2020年2月上演予定だったのがコロナで中止になり、今回の上演になったそうだ。最近上演されている芝居にはそんなリベンジ公演が多い。この芝居には五輪の聖火と思しき「火」を目指して行列する人々が出てくる。五輪前夜の公演なら、より印象深いシーンになったろうと思われる。

 破滅に向かって行く世界、破滅を乗り越えて歩み続ける人間――そんな有様を表現した舞台だと感じた。