6年前と似た動機で『西域』(羽田明)を再読 ― 2025年08月24日
6年前に読んだ西域の歴史の概説を再読した。
『西域(世界の歴史10)』(羽田明/河出書房新社/1969.2)
6年前、「幻のソグディアナ タジキスタン紀行」というツアーへの参加を決め、その事前勉強の一環で本書を読んだ。
来月、(2025年9月)、「西域シルクロード紀行~カシュガル・ホータン・クチャとタクラマカン砂漠縦断」というツアーに参加する予定だ。その準備として、内容をほとんど失念している本書を再読した。
本書の刊行は半世紀以上昔である。もっと新しいシルクロード概説書が何冊もあり、そのいくつかは私も読んできた。だが、西域旅行に先立って読み返したいと思ったのは本書である。『西域』というタイトルに惹かれたのかもしれない。
再読とは言え内容をほとんど憶えていないので、新鮮な気分で「ヘェー」と思いながら読み進めた。1回読んだだけで歴史概説書の内容が頭に入るとは思っていないが、わが忘却力を追認する読書体験だった。
タジキスタン旅行準備中の6年前は、パミール山塊の西側のソグディアナに注目して読んだと思う。今回のツアーはパミール山塊の東側のタリム盆地(タクラマカン砂漠)周辺なので、この地域に重点を置いて読んだ。
本書には、先日読んだばかりの大谷探検隊の橘瑞超も登場する。18歳で第二次隊として派遣された瑞超を「世界探検史上にもまれな少年探検家だった」と紹介している。私が来月訪問予定のクチャのキジル千仏洞は、大谷探検隊が「ドイツよりもさきに、ということはどの国の調査隊よりもさきに、実測図をつくったりした」そうだ。だが、その資料はその後なくってしまい、内容はわからないという。
本書で再認識したのは、東西文化交流の歴史の古さだ。著者の羽田氏は、アケメネス朝ペルシアのダレイオス1世の事蹟を刻んだ巨大なベヒストゥーン石碑(前6世紀末)が前3世紀のアショカ王や始皇帝の碑文に影響を及ぼした可能性を指摘している。ペルシアからインドや中国への文化波及は、張騫らがシルクロードを拓く以前の時代からあったと考えるのが自然なようだ。
タリム盆地周辺の歴史は、周囲の諸勢力のせめぎあいの歴史であり、かなり複雑で頭に入りにくい。今回の再読で、ウイグル族の西走が大きなポイントだと思った。モンゴリアで突厥帝国のあとを継いだウイグル帝国はキルギス・トルコ族の襲撃で瓦解、ウイグル族は西走する。それによって、アーリア系だった西域の住民のトルコ化が進む。ウイグル族の人々の容貌はアーリア化していく。トルキスタンの誕生である。西域で活躍した西ウイグルについては不明な事項も多いそうだ。
西ウイグルやトルコ系のさまざまな部族について、あらためて整理・勉強してみたくなった。
『西域(世界の歴史10)』(羽田明/河出書房新社/1969.2)
6年前、「幻のソグディアナ タジキスタン紀行」というツアーへの参加を決め、その事前勉強の一環で本書を読んだ。
来月、(2025年9月)、「西域シルクロード紀行~カシュガル・ホータン・クチャとタクラマカン砂漠縦断」というツアーに参加する予定だ。その準備として、内容をほとんど失念している本書を再読した。
本書の刊行は半世紀以上昔である。もっと新しいシルクロード概説書が何冊もあり、そのいくつかは私も読んできた。だが、西域旅行に先立って読み返したいと思ったのは本書である。『西域』というタイトルに惹かれたのかもしれない。
再読とは言え内容をほとんど憶えていないので、新鮮な気分で「ヘェー」と思いながら読み進めた。1回読んだだけで歴史概説書の内容が頭に入るとは思っていないが、わが忘却力を追認する読書体験だった。
タジキスタン旅行準備中の6年前は、パミール山塊の西側のソグディアナに注目して読んだと思う。今回のツアーはパミール山塊の東側のタリム盆地(タクラマカン砂漠)周辺なので、この地域に重点を置いて読んだ。
本書には、先日読んだばかりの大谷探検隊の橘瑞超も登場する。18歳で第二次隊として派遣された瑞超を「世界探検史上にもまれな少年探検家だった」と紹介している。私が来月訪問予定のクチャのキジル千仏洞は、大谷探検隊が「ドイツよりもさきに、ということはどの国の調査隊よりもさきに、実測図をつくったりした」そうだ。だが、その資料はその後なくってしまい、内容はわからないという。
本書で再認識したのは、東西文化交流の歴史の古さだ。著者の羽田氏は、アケメネス朝ペルシアのダレイオス1世の事蹟を刻んだ巨大なベヒストゥーン石碑(前6世紀末)が前3世紀のアショカ王や始皇帝の碑文に影響を及ぼした可能性を指摘している。ペルシアからインドや中国への文化波及は、張騫らがシルクロードを拓く以前の時代からあったと考えるのが自然なようだ。
タリム盆地周辺の歴史は、周囲の諸勢力のせめぎあいの歴史であり、かなり複雑で頭に入りにくい。今回の再読で、ウイグル族の西走が大きなポイントだと思った。モンゴリアで突厥帝国のあとを継いだウイグル帝国はキルギス・トルコ族の襲撃で瓦解、ウイグル族は西走する。それによって、アーリア系だった西域の住民のトルコ化が進む。ウイグル族の人々の容貌はアーリア化していく。トルキスタンの誕生である。西域で活躍した西ウイグルについては不明な事項も多いそうだ。
西ウイグルやトルコ系のさまざまな部族について、あらためて整理・勉強してみたくなった。
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