8角柱8本の舞台が象徴的な『破門フェデリコ』 ― 2024年08月10日
PARCO劇場で『破門フェデリコ~くたばれ!十字軍~』(作:阿部修英、演出:東憲司、出演:佐々木蔵之介、上田竜也、那須凜、栗原英雄、六角精児、他)を観た。
私は「世界の驚異」と呼ばれた神聖ローマ皇帝フェデリコ(フリードリヒ)2世に関心がある。2カ月前には『フリードリヒ2世』(藤澤房俊)を読み、『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』(塩野七生)を再読した。この皇帝を扱った「エルサレム和平・若き皇帝の決断」という番組を20年前にNHKが放映したと知り、昨年になってオンデマンドで視聴し、関連書も読んだ。
そして、今年になってNHKBSで『パクス・ヒュマーナ:平和という“奇跡”』というドキュメンタリーを観た。第6回十字軍でエルサレムを無血開城したフェデリコ2世に焦点を当てた番組である。ナビゲーターの佐々木蔵之介が、フェデリコ2世が建てた8角形の城(カステル・デル・モンテ)を訪ね、往時の業績を偲ぶ内容だった。私は今月末、南イタリア旅行に行きカステル・デル・モンテを訪れる予定である。旅行を決断した要因のひとつはこの番組だった。
だから、佐々木蔵之介主演の『破門フェデリコ』という芝居が上演されると知ったときは驚いた。南イタリア旅行の前に観劇したいと思ったが、すでに前売券は完売だった。しかし、何とか当日券をゲットし、昨日(2024.8.9)観劇できた。
芝居のパンフレットによって、作者の阿部修英氏(テレビマンユニオン)は『パクス・ヒュマーナ:平和という“奇跡”』(2024.2.23初回放送)のディレクターだと知った。あの番組はこの芝居の企画と並行して制作したようだ。戦争の時代を終わらせて平和を希求するという理念は、番組にも芝居にも色濃く反映されている。
『破門フェデリコ』は、私が想定した内容とは少し違っていた。史実をふまえてはいるが、メッセージ性の強い芝居になっている。大胆なデフォルメこそが演劇の魅力である。
息子ハインリヒ(上田竜也)の造形は私の意表をついた。父親の器量を理解できないがゆえに教皇に利用され、反乱を起こして敗れ、目をつぶされ、後に崖から身を投げて果てた王子である。この芝居では、ハインリヒにかなり重要な役割を与えている。こんな描き方もあるのかと感心した。
教皇グレゴリウス(インノケウス3世、ホノリウス3世も融合:六角精児)のコミカルかつ悪辣な姿は、現代世界にまで続く人類の愚かさを体現しているように見える。
あの8角形の城カステル・デル・モンテは、この芝居全体の象徴的な背景になっている。舞台装置は高さの異なる8本の8角柱がメインである。かなりシンプルだ。8本の8角柱を自在に動かしながら芝居は進行する。
フェデリコとカーミル(イスラムのスルタン:栗原英雄)との8角形をめぐる書簡の応酬は秀逸で面白い。6角形は自然、8角形は人工という見解を、この芝居で初めて知った。8角形は理性という人類の希望のシンボルかもしれない。
私は「世界の驚異」と呼ばれた神聖ローマ皇帝フェデリコ(フリードリヒ)2世に関心がある。2カ月前には『フリードリヒ2世』(藤澤房俊)を読み、『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』(塩野七生)を再読した。この皇帝を扱った「エルサレム和平・若き皇帝の決断」という番組を20年前にNHKが放映したと知り、昨年になってオンデマンドで視聴し、関連書も読んだ。
そして、今年になってNHKBSで『パクス・ヒュマーナ:平和という“奇跡”』というドキュメンタリーを観た。第6回十字軍でエルサレムを無血開城したフェデリコ2世に焦点を当てた番組である。ナビゲーターの佐々木蔵之介が、フェデリコ2世が建てた8角形の城(カステル・デル・モンテ)を訪ね、往時の業績を偲ぶ内容だった。私は今月末、南イタリア旅行に行きカステル・デル・モンテを訪れる予定である。旅行を決断した要因のひとつはこの番組だった。
だから、佐々木蔵之介主演の『破門フェデリコ』という芝居が上演されると知ったときは驚いた。南イタリア旅行の前に観劇したいと思ったが、すでに前売券は完売だった。しかし、何とか当日券をゲットし、昨日(2024.8.9)観劇できた。
芝居のパンフレットによって、作者の阿部修英氏(テレビマンユニオン)は『パクス・ヒュマーナ:平和という“奇跡”』(2024.2.23初回放送)のディレクターだと知った。あの番組はこの芝居の企画と並行して制作したようだ。戦争の時代を終わらせて平和を希求するという理念は、番組にも芝居にも色濃く反映されている。
『破門フェデリコ』は、私が想定した内容とは少し違っていた。史実をふまえてはいるが、メッセージ性の強い芝居になっている。大胆なデフォルメこそが演劇の魅力である。
息子ハインリヒ(上田竜也)の造形は私の意表をついた。父親の器量を理解できないがゆえに教皇に利用され、反乱を起こして敗れ、目をつぶされ、後に崖から身を投げて果てた王子である。この芝居では、ハインリヒにかなり重要な役割を与えている。こんな描き方もあるのかと感心した。
教皇グレゴリウス(インノケウス3世、ホノリウス3世も融合:六角精児)のコミカルかつ悪辣な姿は、現代世界にまで続く人類の愚かさを体現しているように見える。
あの8角形の城カステル・デル・モンテは、この芝居全体の象徴的な背景になっている。舞台装置は高さの異なる8本の8角柱がメインである。かなりシンプルだ。8本の8角柱を自在に動かしながら芝居は進行する。
フェデリコとカーミル(イスラムのスルタン:栗原英雄)との8角形をめぐる書簡の応酬は秀逸で面白い。6角形は自然、8角形は人工という見解を、この芝居で初めて知った。8角形は理性という人類の希望のシンボルかもしれない。
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