『フランス革命:歴史における劇薬』は熱い本2023年12月18日

『フランス革命:歴史における劇薬』(遅塚忠躬/岩波ジュニア新書)
 フランス革命を概説した『革命と皇帝(大世界史14)』に続いて、次の岩波ジュニア新書を読んだ。

 『フランス革命:歴史における劇薬』(遅塚忠躬/岩波ジュニア新書)

 岩波ジュニア新書は中高生が対象だと思うが、シニアに有益なものも少なくない(ジュニアを冠すると敬遠する高校生もいそう)。本書冒頭、青春を表現したロダンの彫刻「青銅時代」を写真で紹介し「私は、この本を、いま青銅時代にある皆さんに読んでもらうために書きました」とある。そこまで言われると、75歳の私は場違いな居心地の悪さを多少感じてしまう。

 この新書を入手したのは2年前だ。高校世界史の教師で『岩波講座・世界歴史』の編集委員でもある小川幸司氏が『世界史との対話(上)』の「まえがき」で紹介していたので、興味がわいて購入した。読むまでに2年が経過した。遅塚忠躬氏は小川氏の恩師だそうだ。

 本書はフランス革命の概説ではなく、革命をどう評価するかを論じている。サブタイトルにある通り、フランス革命を「劇薬」に例えている。劇薬は作用がはげしく、使い過ぎると生命が危うくなる。服用するには覚悟が必要だ。でも、薬だから効果はある。

 フランス革命には、多くの人(2万人?)をギロチンに送った恐怖政治のイメージがある。1989年にフランス革命200周年を祝おうという計画が立てられたとき、あんな流血の恐怖政治を祝うのかという反論が出て、もっぱら1989年の「人権宣言」を祝うということになったそうだ。

 著者はフランス革命の成果を高く評価している。そして、フランス革命の偉大と悲惨は切り離せない一体と見なし、フランス革命は劇薬にならざるを得なかったとしている。本書全体がその論拠の展開である。本書の末尾近くでは次のように述べている。

 「フランス革命は、リーダーも大衆も含めて、偉大でもあり悲惨でもある人間たちがあげた魂の叫びであり、巨大な熱情の噴出であった、と私は思います。」

 若い読者に向けた熱い本である。本書を読んだ青少年は、理想を抱いて世の中を変革する意思を鼓舞されるかもしれない。それは結構なことである。だが、多少の懸念もある。熱情に駆られて熱狂するとロクでもない結果になることも多い。ジュニア新書を読んだシニアの感慨だ。