ギボン絡みでアシモフの『ファウンデーション』に手を出した2021年08月11日

『銀河帝国衰亡史』(アシモフ/中上守訳/ハヤカワSFシリーズ)、『ファウンデーション』(アシモフ/岡部宏之訳/ハヤカワ文庫)
 私は半世紀以上昔の高校生のころはSF少年だったが、アシモフの『ファウンデーション』は未読だった。SFマガジン分載のこの作品を友人が話題にしていた記憶がかすかに残っているだけだ。その『ファウンデーション』を70歳を過ぎて読んだ。

 『ファウンデーション:銀河帝国興亡史1』(アイザック・アシモフ/岡部宏之訳 ハヤカワ文庫)

 この作品、かつてのハヤカワSFシリーズで『銀河帝国衰亡史』の題名で出ていて(1968年刊行)、かなり以前に古書で入手していたので、この版で読み始めた。だが、ハヤカワ文庫で新訳が出ていると知り、そちらに切り替えた。この小説には続編があり、続編も読むなら新訳の方がつながりがいいと思えたからである。

 私がこの小説を読む気になったのは、昔のSFの懐かしさに浸りたくなったからではない。ギボンのせいである。

 私は何年か前にギボンの『ローマ帝国衰亡史』(ちくま学芸文庫全10巻)を読了した。だが、教養不足のため消化不良気味だった。いつの日か、事前に資料や予備知識を整えたうえで、この大著をゆっくり味読するのが夢である。その準備でボチボチと関連書を読んだりファイルを作ったりしている。そんな中でアシモフの『ファウンデーション』が気がかりになってきたのである。

 ウィッキペディア(日本語)の『ローマ帝国衰亡史』は「関連書籍」として4点を紹介している。そのうちの2点( 『ギボン自伝』 『ギボン―歴史を創る』)は既に読んだ。残り2点の一つは平易な入門書で、もう一つがアシモフの『ファウンデーションシリーズ』なのだ。ちょっと異質な選定に思えるが、アシモフは『ローマ帝国衰亡史』を読んで『ファウンデーション』を構想したとされているからである。

 『ファウンデーション』を読み終えて、古きよき時代のSFだと感じた。この作品は、太平洋戦争さなかの1942年から1944年にかけてSF雑誌にとびとびに掲載されたもので、アシモフ20代前半の作品である。私が生まれる前に出たSFだから古色蒼然は当然で、あんな時代にこれだけの構想の宇宙小説を書いたことに感心する。

 私の関心は、このSFにギボンの影響がどれほど感じられるかにある。結論は「かすかに感じられる」だ。古代史の知見を未来史に投影するのは一般的であり、衰退する中央と勃興する周縁という構造は普遍的だと思う。

 この小説で面白いと思ったのは、文明が衰退していくなかで科学が宗教に姿を変え、科学者が魔法(科学)を操る司祭になっていくという設定である。キリスト教の発生と発展を辛辣な筆致で描いたギボンがアシモフに影響しているのかもしれない。

 19歳でSF雑誌にデビューしたアシモフは生化学者でもあり、小説以外に多数の解説書を書いている。著作は300冊を越えるそうだ。その中にはローマ史の概説書もある。『ファウンデーションシリーズ』を読んだら、アシモフによるローマ史の概説書も読んでみたい。

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