『<木挽町>のあだ討ち』は面白かった2026年03月10日

『木挽町のあだ討ち』(永井紗耶子/新潮文庫)
 2023年に山本周五郎賞と直木賞をW受賞した『木挽町のあだ討ち』が映画化され、話題になっている。映画評を読んで原作を読みたくなった。

 『木挽町のあだ討ち』(永井紗耶子/新潮文庫)

 江戸時代のあだ討ちの物語である。登場人物の大半は架空の人物で、戯作者の篠田金治だけは実在の人物をモデルに脚色しているようだ。先日、『歴史小説のウソ』を読んだばかりなので、歴史小説の実例をニヤニヤしながら検証している気分になった。よくできたエンタメである。面白かった。

 この小説にはミステリーの要素があり、以下はネタバレの読後感になる。

 あだ討ちの2年後、若い武士があだ討ちの目撃者たちを訪ねて、2年前の事件の目撃談を聞いて回るという趣向の小説である。ミステリーとしては半ばあたりで仕掛けが見えてくるが、面白さは減衰しない。5人の興味深い「歌舞いた」人物たちの語りという構成に引き込まれる。この世は舞台、人はみな役者という趣がいい。

 この小説のタイトルを聞いたとき、実在の事件を題材にしているのかと思い「木挽町であだ討ちがあったかなあ」と思った。現在、木挽町はないが、歌舞伎座のあたりが江戸時代には木挽町と呼ばれていた。私は、歌舞伎座のある東銀座周辺には多少の土地勘がある。若い頃には彼の地の「こびき」とい小料理屋によく行き、店名の由来から木挽町を知ったのだ。

 「木挽町であだ討ちがあったかなあ」と思ったとき、思考がその先に進まなかったのはウカツだった。己れの凡庸を自覚する。現在の歌舞伎座があったあたりに、江戸時代には森田座という芝居小屋があった。あだ討ちは、森田座の前で実施される。だから「木挽町のあだ討ち」なのである。なぜそんな場所でと考えれば、タイトルから物語の仕掛けを推測できてもよかったのに――そう思ったのは読了後である。

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