『モンゴル帝国の興亡』(岡田英弘)は20世紀までの歴史2025年12月03日

『モンゴル帝国の興亡』(岡田英弘/ちくま新書/2001.10)
 20年以上前に出た次の新書を古書で入手して読んだ。

 『モンゴル帝国の興亡』(岡田英弘/ちくま新書/2001.10)

 岡田英弘(1931-2017)はユニークな歴史学者である。チンギス・ハーンが即位した1206年に世界史が始まったと説く『世界史の誕生』は刺激的な本だった。

 人類共通の歴史である世界史は、ユーラシアの東西をつないだモンゴルに始まるという説に説得力がある。世界史におけるモンゴルの重要性を指摘した杉山正明(1952-2019)の言説に通じる。世代的に見て岡田英弘説を杉山正明が踏襲したのだろうか。

 杉山正明には本書と同名の新書『モンゴル帝国の興亡』(講談社現代新書/1996.5)がある。私は6年前にこの新書を読んだが、その内容の大半は失念している。モンゴル史を復習するため、いずれ再読と思っていたが、再読の前に同名の別の新書を読む方がよさそうに思え、本書を読んだのである。

 この新書を読了し、頭の中はモヤモヤしている。長時間の歴史の圧縮記述が、すんなりとは頭に入って来なかった。チンギス・ハーンの時代からソ連崩壊後のモンゴル国(それ以前はモンゴル人民共和国)までの長い歴史の上澄みをなでただけ、という気分である。

 私が何となくイメージできるモンゴル史は5代目ハーンのフビライまでだ。それ以降の歴史は霧の中だ。約250ページの本書の81ページでフビライが亡くなる(1294年)。私がついていけたのは、そのあたりまで。その後の三分の二強は、未知の固有名詞が頻出する約700年の詳細年表を読み上げるような読書だった。オイラト、北元(モンゴル)、後金(清)からジュンガルに至る氏族や部族の抗争がぼんやりと浮かぶ。

 本書であらためて認識したのは、キリスト教ネストリウス派(景教)のモンゴルの地への浸透だ。431年のエフェソス公会議で異端とされたネストリウス派は東方に活路を開いたのである。

 また、バト率いるヨーロパ遠征(1236年~)にイングランドから逃れてきたイギリス人貴族の将校が参加していたとの話に驚いた。著者は次のように述べている。

 「キリスト教世界の事情に通じているフランス派のこのイギリス人がモンゴル軍の先鋒部隊に加わって道案内をつとめていたところから見て、モンゴル軍の遠征の最終目的が、大西洋にまで達する西ヨーロッパ全体の征服であったことは疑いない。」

 あのとき、オゴデイ死去の知らせが届いていなければ――などと夢想してしまう。