森永卓郎氏の『ザイム真理教』『書いてはいけない』は陰謀論か?2024年10月27日

『ザイム真理教』(森永卓郎/三五館シンシャ)、『書いてはいけない:日本経済墜落の真相』(森永卓郎/三五館シンシャ)
  森永卓郎氏の次の本を続けて読んだ。

『ザイム真理教』(森永卓郎/三五館シンシャ/2023.6)
『書いてはいけない:日本経済墜落の真相』(森永卓郎/三五館シンシャ/2024.3)

 数日前(2024.10.24)の新聞(朝日と日経)に、新刊の『投資依存症』と並んで上記2書を並べた三五館シンシャの広告が載っていた。その広告によれば『ザイム真理教』は19万部、『書いてはいけない』は27万部売れているそうだ。本が売れない時代、ご同慶の至りである。

 三五館シンシャという出版社を私は2年前に知り、興味を抱いた。きっかけは備中松山藩の山田方谷である。私はこの人物に関心がある。『財政の巨人:幕末の陽明学者・山田方谷』(林田明大/三五館)という本を読んだとき、その本の出版社を検索し、三五館がすでに倒産し、社員の一人が三五館シンシャという別会社を立ち上げていると知った。その経緯を綴った文章がとても面白く、強く印象に残った。

 だから、森永卓郎氏の『ザイム真理教』が三五館シンシャから刊行されたと知ったとき、あの出版社が有名な著者の本を出したのかと驚いた。この本の「あとがき」によれば、知り合いの大手出版社数社から出版を断られ、三五館シンシャに持ち込み、ようやく出版にこぎつけたそうだ。

 なぜ、大手出版社は断ったのか。財務省を批判した本だからである。そんなことで自主規制するのかと思うが、財務省の心象を害した会社には税務調査が入る可能性が高く、面倒なことになるリスクがあるのだ。陰謀論めいた話に思えるかもしれないが、私は納得できる。税務調査には恣意性があり、企業にとっては災難以外の何物でもない。

 『ザイム真理教』は財政収支の均衡を目指す財務省をカルト教団に近いと批判している。緊縮財政から積極財政に転換し、消費税減税(あるは廃止)をしなければ日本経済は成長しないと主張し、日銀が国債をどんどん引き受けてもハイパーインフレにはならないと解説している。その根拠も述べている。私は、この主張の当否を今のところ判断できない。森永氏によれば、日本人の7割がザイム真理教に洗脳されているそうだ。私も洗脳されているのかもしれない。

 だが、森永氏の財務省批判には首肯できる点も多い。高級官僚の天下り、金融ムラの癒着、露骨な洗脳活動(与党、野党、メディア、芸能界から子供まで)、恣意的な税務調査などが問題なのは確かだ。

 森永氏が主張するように大多数の日本人が洗脳されているとすれば、その洗脳を解くのは容易でないと思う。私は、どこにでも付く膏薬のような経済学の理屈をなかなか信用できない。だが、本書をベースに少しは勉強してみようかという気になった。

 『書いてはいけない』は三つのタブーを語っている。「ジャニーズ性加害」「財務省のカルト的財政緊縮主義」「日本航空123便の墜落事件」の三つであり、森永氏によれば、これらはメディアでは触れることができないテーマだそうだ。

 ジャニーズ問題はBBCの報道を契機にタブーでなくなりつつあるが、それ以前にテレビ出演者の一人として見聞したアレコレを述べていて、興味深い。この本がジャニーズ問題を取り上げているのは、他のタブーも同じ構造だと主張するためである。

 『書いてはいけない』の読後感を書くのは『ザイム真理教』以上に難しい。森永氏は否定するだろうが、陰謀論に近いからである。

 29年前の日航機墜落事故は、訓練中の自衛隊による尾翼への誤射がひきがねで、最終的には自衛隊のミサイルによる右エンジン攻撃で墜落、その現場は特殊部隊が焼き払った――という説を紹介し、森永氏は9割は正しいだろうと述べている。さらに、墜落原因をボーイング社におしつけたことが日本の米国への借りとなり、後日のプラザ合意に影響し、その後の日本経済墜落の要因になったとしている。

 日航機墜落事故にいくつかの謎があるとしても、にわかには信じがたい説である。事実だとしたら天地がひっくり返るような大騒動になるだろう。

 仮に事実なら、それを知る関係者は少なくないはずである。その全員が何も語らず何も残さずにこの世から消えていくということがあるだろうか。何らかの記録が出てくれば面白いとは思うが。