大河ドラマ『光の君へ』の藤原実資への興味がわいた2024年03月10日

「紫式部と藤原道長」(倉本一宏/講談社現代新書)
 私はNHKの大河ドラマの大半は見ていないが、今年の『光の君へ』は視聴を続けている。舞台が平安時代で紫式部が主人公という意外性に興味を抱いたからである。と言っても、藤原道長や紫式部についてほとんど知らない。源氏物語は口語訳すら読んだことはない。

 ドラマは現代的で意外に面白い。かなりフィクションを盛り込んでいると感じるが、そもそもの史実を知らないので、どこまで史実を踏まえているかわからない。で、このドラマの時代考証を担当した研究者が著した次の新書を読んだ。

 「紫式部と藤原道長」(倉本一宏/講談社現代新書)

著者は「はじめに」で次のように述べている。

 「紫式部と道長が2024年の大河ドラマの主人公になることが決まったとき、平安時代を研究する者として、この時代の歴史にもやっと日が当たる時が来たと喜んだものである(その直後、喜んでばかりいられないことになってしまったが)。しかし、ドラマのストーリーが独り歩きして、紫式部と道長が実際にドラマで描かれるような人物であったと誤解さるのは、如何なものかとは思う。この本では、ここまでは史実であるという紫式部と道長のリアルな姿を、明らかにしていきたい。」

 本書は一次史料で確認できる紫式部と藤原道長の姿を描いている。同時代に紫式部や道長に実際に接した人が残した史料から推測される二人のイメージは、ドラマとはかなり異なる。

 ドラマは少年少女時代の道長と紫式部の出会いを描いているが、著者は次のように指摘している。

 「五男とはいえ摂関家の子息である道長と無官の貧乏学者の女である紫式部が幼少期に顔を合わせた可能性は、ほぼゼロといったところであるが。」

 史実で確認できない部分を想像力で膨らませるのが歴史ドラマの醍醐味だから、若い紫式部と道長が互いに引かれ合う設定はいいと思う。と言うか、そうでなければ物語は始まらない。

 だが、本書によって紫式部が親子ほど年の離れた年長の藤原宣孝と結婚すると知って驚いた。ドラマの藤原宣孝は紫式部の父を時々訪れる気さくなオジサンで、佐々木蔵之介が演じている。今後、このオジサンが吉高由里子演じる紫式部に求婚する展開になるとは想像し難いが、史実を変えるわけにはいかないだろう。

 本書には、藤原実資の記した日記『小右記』からの引用が多い。藤原実資はドラマでも日記を書き続ける不平不満の貴族として登場する。この人物は、この先長く道長や紫式部の生涯に付き合っていくことになるようだ。ドラマを観るうえで、実資への興味が大きくなった。

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