「重層環節」という言葉で中国を捉える「岩波講座 世界歴史」 ― 2022年03月22日
昨年10月から月1回ペースで刊行の「岩波講座 世界歴史」、わが人生晩年のよすがにと購入しているが、きままにボチボチ読んでいるので、刊行ペースに読書が追いつかない。もとより、刊行順にはこだわらず興味のある巻から読むつもりである。
で、次の巻をやっと読み終えた。
『中華世界の盛衰 ~4世紀(岩波講座世界歴史05)』(責任編集:冨谷至/岩波書店)
中国史の最初の巻で、西晋滅亡までを扱っている。論文10編とコラム5編の構成である。この講座は巻頭の「展望 Perspective」と掲げたやや長めの論文が読み応えがあって勉強になる。この巻の巻頭論文(展望 Perspective)は次の通りだ。
「中華世界の重層環節 その第一幕」(冨谷至)
西晋滅亡までの中国史を展望的に概説している。「重層環節」は聞きなれない言葉だ。「環節」がわからない。広辞苑によれば「昆虫やミミズのように体が多数の環状の分節から成るものの、その一つ一つ」だそうだ。ネット検索すると「環節的社会」という社会学の用語があるらしいが、その意味はよくわからない。
巻頭論文で著者は次のように述べている。
〔かかる異なる民族と文化を併呑して換骨奪胎を繰り返す「中華世界」の拡大と変質の歴史的展開をここで、「中華世界の重層環節」と表現することにし、各巻(この巻と、それに続く中国関連の巻)はその「重層環節」を解説したものである〕
〔この「中華世界の重層環節」は、じつは現在の中華人民共和国のあり方にも繋がると考えられ、それは「拡大する中華国家」に他ならない。〕
何となく雰囲気はわかる。次の指摘が示唆に富んでいる。
〔「中華」の内容は一定不変ではなく、流動性の中で変化し続けたのである。その流動性をもたらしたのは、そもそも「中華」「中国」の概念が意識的に作為され、それゆえ可変的であるからに他ならない。〕
そんな視点で、秦・漢をある意味で相対化し、周辺の多様な勢力との関わりによって展開していく歴史の流れを描いている。漢人中心の見方を超えた概説である。
巻頭論文以外で私が興味深く読んだのは「漢晋期の中央アジアと中華世界」(荒川正晴)である。私はシルクロード史や中央アジア史に関心があるので勉強になった。シルクロード交易におけるクシャン朝の役割の大きさをあらてめて知った。ソグド商人が南海交易にも参加していたという指摘にも驚いた。
で、次の巻をやっと読み終えた。
『中華世界の盛衰 ~4世紀(岩波講座世界歴史05)』(責任編集:冨谷至/岩波書店)
中国史の最初の巻で、西晋滅亡までを扱っている。論文10編とコラム5編の構成である。この講座は巻頭の「展望 Perspective」と掲げたやや長めの論文が読み応えがあって勉強になる。この巻の巻頭論文(展望 Perspective)は次の通りだ。
「中華世界の重層環節 その第一幕」(冨谷至)
西晋滅亡までの中国史を展望的に概説している。「重層環節」は聞きなれない言葉だ。「環節」がわからない。広辞苑によれば「昆虫やミミズのように体が多数の環状の分節から成るものの、その一つ一つ」だそうだ。ネット検索すると「環節的社会」という社会学の用語があるらしいが、その意味はよくわからない。
巻頭論文で著者は次のように述べている。
〔かかる異なる民族と文化を併呑して換骨奪胎を繰り返す「中華世界」の拡大と変質の歴史的展開をここで、「中華世界の重層環節」と表現することにし、各巻(この巻と、それに続く中国関連の巻)はその「重層環節」を解説したものである〕
〔この「中華世界の重層環節」は、じつは現在の中華人民共和国のあり方にも繋がると考えられ、それは「拡大する中華国家」に他ならない。〕
何となく雰囲気はわかる。次の指摘が示唆に富んでいる。
〔「中華」の内容は一定不変ではなく、流動性の中で変化し続けたのである。その流動性をもたらしたのは、そもそも「中華」「中国」の概念が意識的に作為され、それゆえ可変的であるからに他ならない。〕
そんな視点で、秦・漢をある意味で相対化し、周辺の多様な勢力との関わりによって展開していく歴史の流れを描いている。漢人中心の見方を超えた概説である。
巻頭論文以外で私が興味深く読んだのは「漢晋期の中央アジアと中華世界」(荒川正晴)である。私はシルクロード史や中央アジア史に関心があるので勉強になった。シルクロード交易におけるクシャン朝の役割の大きさをあらてめて知った。ソグド商人が南海交易にも参加していたという指摘にも驚いた。
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