白石加代子女優生活50周年記念公演を観て懐旧2017年10月18日

 池袋の「あうるすぽっと」で「白石加代子女優生活50周年記念公演」と銘打った『笑った分だけ怖くなる vol.2』を観た。白石加代子と佐野史郎による朗読劇で、演目は『乗越駅の刑罰』(作・筒井康隆)と『ベーコン』(作・井上荒野)の2作。

 この公演に食指が動いたのは白石加代子と筒井康隆という怖ろし気な取り合わせに惹かれたからだ。白石加代子の舞台を観るのは学生時代に「早稲田小劇場」の『劇的なるのをめぐって 2』以来だと思う。だとすれば約半世紀ぶりだ。

 1960年代末から1970年代初頭の時代、白石加代子はアングラの女王的な怪女優だった。当時の彼女が何歳だったか知らないが、最近たまたまちらりと朝ドラで観た彼女の印象は昔とさほど変わらない。

 約半世紀ぶりに舞台で観た白石加代子は昔の「化け物」的な印象が残ってはいるものの洗練された大女優のようでもあった。

 『乗越駅の刑罰』も『ベーコン』も観ているうちに異世界に引き込まれていくような舞台だった。カーテンコールの際に、白石加代子と佐野史郎の短いトークがあり、その内容が私の遠い記憶をゆさぶった。

 白石加代子と佐野史郎の接点に関するトークだった。白石加代子は「早稲田小劇場」時代に『少女仮面』に主演している。『少女仮面』は「状況劇場」の唐十郎が「早稲田小劇場」のために書いた戯曲で、岸田戯曲賞を受賞した。「劇壇の芥川賞」と言われる岸田戯曲賞を怪しげなアングラが受賞したのは大きな話題になった(その後、唐十郎がホンモノの芥川賞まで受賞するとは予測できなかった)。佐野史郎は唐十郎の「状況劇場」の出身であり、そこに白石加代子と佐野史郎の接点がある。そんな昔話のトークだった。

 私は白石加代子の『少女仮面』を観ていない。伝説の舞台との噂は聞いていた。戯曲は単行本刊行時に読んだ。後に上演された状況劇場版(主演:李礼仙)や西武劇場版(主演:渡辺えり子)の『少女仮面』を観た記憶はある。

 「あうるすぽっと」から帰宅し、書棚の奥から『少女仮面:唐十郎作品集』(学藝書林/1970.3.5)を引っ張り出した。口絵には白石加代子の『少女仮面』舞台写真が載っている。パラパラと戯曲を読み返すと、懐かしくも印象深い挿入歌に遭遇した。

  時はゆくゆく乙女は婆アに、
  それでも時がゆくならば
  婆アは乙女になるかしら

 メロディも鮮明によみがえってくる。昔、「唐十郎:四角いジャングルで歌う」というLPレコードで繰り返し聞いたからかもしれない。

 この歌詞、女優生活50周年の白石加代子に重なってくる。

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