勘九郎・七之助の『赤坂大歌舞伎』は楽しい2015年09月08日

 中村勘九郎、中村七之助の赤坂大歌舞伎の初日公演を観た。赤坂ACTシアターに行くのは初めてで、中村勘三郎が7年前に始めた赤坂大歌舞伎の観劇は初体験だ。

 サービス精神のある楽しい舞台で、あらためて歌舞伎は現代にも通用するエンターテインメントだと思った。

 演目は『操り三番叟』と『お染めの七役』、私にはどちらも初見だ。『操り三番叟』の操り人形の舞踏はユーモラスであり、一人七役の早替わりが趣向の『お染めの七役』には圧倒された。

 かつて、猿之助サーカスという言葉を聞いたことがあるが、『お染めの七役』は、さながら七之助マジックショーである。

 勘九郎、七之助には勘三郎の遺児というイメージがある。歌舞伎界にとって中村勘三郎という特異なスターを喪った穴は大きいだろが、二人の息子がその穴を埋めつつあると感じた。勘九郎の貫録と七之助の美しさには見ごたえがある。遺児というイメージは薄まりつつあるようだ。

 世の中、どの世界にも「余人をもって代えがたい」と見なされている人がいて、その人を喪ったときには先行きが危ぶまれるものだ。しかし、存外なんとかなるもので、この世の時の流れには喪われた人の穴を埋めつくしてしまう大きな力あるようだ。赤坂大歌舞伎を観ながらそんなことを感じた。