キルギス紀行を機に22年前のブックレットを読んだ2026年08月16日

『天山の小さな国・キルギス:日本語教師の遊憂記』(三井勝雄/ユーラシア・ブックレット/東洋書店/2004.2)
 先月のカザフ・キルギス紀行の現地ガイド・エルメックさんは、とても日本語が上手だった。微妙な表現がわかり、標準語と関西弁の使い分けもできる。日本の首相や外相が来訪したとき、キルギス側の通訳を務めたそうだ。日本在住経験者だと推測したが、日本へは旅行で行っただけだという。

 彼はビシュケクの大学で日本人の三井先生から日本語を学んだそうだ。三井先生にはとても感謝していると語っていた。その三井先生が書いた本があると知り、ネット古書店で入手して読んだ。

 『天山の小さな国・キルギス:日本語教師の遊憂記』(三井勝雄/ユーラシア・ブックレット/東洋書店/2004.2)

 22年前に出た本である。注文したとき、特異な海外体験を綴った単行本だと思ったが、早とちりだった。届いたのは64頁のブックレットだった。この「ユーラシア・ブックレット」を手にして、何年か前に同じ叢書の『ミステリとしての「カラマーゾフの兄弟」』(高野史緒)を読んだのを思い出した。

 閑話休題。ソ連が崩壊してキルギスが独立した数年後の2004年に出た本書は、キルギスの地誌や当時の現状紹介がメインの解説書だった。私が想定した日本語教師の体験記ではないが、日本語教師から見た学生に関する記述もあり、その部分が面白かった。

 十数人の日本語クラスでは、大半の学生が遅刻し、欠席も多かった。公共交通機関の問題もあるが、親類縁者とのつきあいや祭りごとに時間をとられることが多いらしい。大学の授業より家族や親族とのきずなを優先する社会なのだ。大学を出ても、それに適した働き口は少ないそうだ。20年以上前の話なので、現在の状況はわからない。

 キルギス人は音楽好きで、どんな微細な音でも聴きわけられ、数度聞いた音はすぐに憶えられる。従って、日本語などの外国語を修得する能力が極めて高いのだ。ナルホドと合点した。

 キルギス紹介の本書で、著者は日本人抑留者の記録にかなりウエイトを置いている。第二次大戦でソ連の捕虜になった日本人は、ソ連の各地でさまざまな労働を課せられた。キルギスにも「日本人兵士」による建築物がいくつか残っている。著者は、当時を知る目撃者たちからの聞き取りをベースに日本人抑留者の「業績」を記録している。著者が本書を執筆した動機は、このことにあったのかもしれない。

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