深夜の甲州街道を歩く会話劇『夜の道づれ』 ― 2025年04月18日
新国立劇場小劇場で『夜の道づれ』(作:三好十郎、演出:柳沼昭徳、出演:石橋徹郎、金子岳憲、他)を観た。
1958年に56歳で亡くなった三好十郎は、私にはあまり馴染みのない過去の劇作家である。だが、チラシで夜の甲州街道を歩く話だと知り、興味がわいた。甲州街道は地元なので親近感がある。新国立劇場がある初台は甲州街道沿いだから、ご当地演劇とも言える。
観劇前に青空文庫で戯曲を入手して読んだ。1950年の作品である。作者を連想させる40代の劇作家が新宿で飲み過ぎて終電車を逃し、深夜の甲州街道を徒歩で烏山まで歩く話である。不思議な男と道づれにり、会話を交わしながら歩き続ける。途中、怪しげな女や男に出会ったりもする。
戯曲からは終戦直後のニヒリズムを色濃く感じた。ときに晦渋になる会話には一種の迫力がある。だが、この会話劇を「歩く」という行為で表現する舞台がイメージしにくい。二人が甲州街道を歩き続ける姿をどう舞台化するのだろう思い、それを確認する楽しみで劇場へ足を運んだ。
舞台は暗い。深夜の甲州街道だから当然である。役者たちは会話を交わしながら、確かに歩き続けていた。二人とも正面を向いて足踏みをしながらしゃべるのである。足踏みの音が異様に大きく響く工夫をしている。
上演の後のアフタートークで、歩く姿の舞台化に紆余曲折があったと知った。当初、足踏みだけやめようと考えたそうだ。回り舞台、手動ベルトコンベアなどの試行錯誤のすえ、結局は足踏みに落ち着いたという。私は足踏みにさほどの不自然は感じなかった。「歩く」という行為を印象的に表現した巧みな芝居に思えた。
この芝居は、甲州街道を歩く劇作家(御橋)と道づれになった男(熊丸)との会話劇である。熊丸は何と甲府まで歩くという。会話は厭世的・厭人的ニヒリズムの探究に近い。御橋は熊丸を精神病患者でないかと疑ったりもする。芝居を観ているうちに、熊丸は御橋の脳内人物にも見えてきた。歩き続けるという行為は、自分の脳内人物を呼び起こし脳内会話を促進させる作用がありそうな気がする。
上演時間は2時間。実際に新宿から烏山まで歩くと約2時間だそうだ。
芝居には烏山の先の仙川という地名が出てくる。烏山近くで二人は、馬車にコエ桶を積んだ農夫とすれ違う。農夫は仙川から市内にコエくみにに行くのだ。今は仙川は賑やかな町である。安藤忠雄設計の「せんがわ劇場」もある。時代を感じた。
1958年に56歳で亡くなった三好十郎は、私にはあまり馴染みのない過去の劇作家である。だが、チラシで夜の甲州街道を歩く話だと知り、興味がわいた。甲州街道は地元なので親近感がある。新国立劇場がある初台は甲州街道沿いだから、ご当地演劇とも言える。
観劇前に青空文庫で戯曲を入手して読んだ。1950年の作品である。作者を連想させる40代の劇作家が新宿で飲み過ぎて終電車を逃し、深夜の甲州街道を徒歩で烏山まで歩く話である。不思議な男と道づれにり、会話を交わしながら歩き続ける。途中、怪しげな女や男に出会ったりもする。
戯曲からは終戦直後のニヒリズムを色濃く感じた。ときに晦渋になる会話には一種の迫力がある。だが、この会話劇を「歩く」という行為で表現する舞台がイメージしにくい。二人が甲州街道を歩き続ける姿をどう舞台化するのだろう思い、それを確認する楽しみで劇場へ足を運んだ。
舞台は暗い。深夜の甲州街道だから当然である。役者たちは会話を交わしながら、確かに歩き続けていた。二人とも正面を向いて足踏みをしながらしゃべるのである。足踏みの音が異様に大きく響く工夫をしている。
上演の後のアフタートークで、歩く姿の舞台化に紆余曲折があったと知った。当初、足踏みだけやめようと考えたそうだ。回り舞台、手動ベルトコンベアなどの試行錯誤のすえ、結局は足踏みに落ち着いたという。私は足踏みにさほどの不自然は感じなかった。「歩く」という行為を印象的に表現した巧みな芝居に思えた。
この芝居は、甲州街道を歩く劇作家(御橋)と道づれになった男(熊丸)との会話劇である。熊丸は何と甲府まで歩くという。会話は厭世的・厭人的ニヒリズムの探究に近い。御橋は熊丸を精神病患者でないかと疑ったりもする。芝居を観ているうちに、熊丸は御橋の脳内人物にも見えてきた。歩き続けるという行為は、自分の脳内人物を呼び起こし脳内会話を促進させる作用がありそうな気がする。
上演時間は2時間。実際に新宿から烏山まで歩くと約2時間だそうだ。
芝居には烏山の先の仙川という地名が出てくる。烏山近くで二人は、馬車にコエ桶を積んだ農夫とすれ違う。農夫は仙川から市内にコエくみにに行くのだ。今は仙川は賑やかな町である。安藤忠雄設計の「せんがわ劇場」もある。時代を感じた。
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