27年前に出た『世界の歴史 (1)』をやっと読了2025年02月22日

『人類の起源と古代オリエント(中公新版・世界の歴史1)	』(大貫良夫・前川和也・渡辺和子・尾形禎亮/中央公論社)
 中央公論社の『世界の歴史』(全30巻)は1996年から1999年にかけて刊行された。その頃、私は世界史にさほどの関心はなく、このシリーズ本もスルーした。リタイアして時間の余裕ができてから世界史への興味がわき、10年ほど前に古書で全30巻をまとめて入手した。かなり安かった(このシリーズ刊行中に社名は中央公論新社になった)。

 購入後、関心のある巻をボチボチ読んでいる。全巻読破したいと思ってはいるが、気まま読書なので、まだ半分も読んでいない。その第1巻を読んだ。

 『人類の起源と古代オリエント(世界の歴史1) 』(大貫良夫・前川和也・渡辺和子・尾形禎亮/中央公論社/1998.11)

 本書の執筆者は4人。次のような構成の執筆分担になっている。

 第1部 人類文明の誕生……大貫良夫
 第2部 都市と帝国
  前半(メソポタミア文明の誕生~)……前川和也
  後半(アッシリアとフリ人の勢力~)……渡辺和子
 第3部 ナイルが育んだ文明……尾形禎亮

 この第1巻は他の巻よりやや厚く、読了にかなりの時間を要した。4冊の歴史概説書を読んだ気分だ。全体がバラバラというわけではないが、4人の学者の歴史エッセイ集に近い。付録の月報には執筆者3人(前川、渡辺、尾形)と小松左京の座談会が載っている。これも面白い。

 古代オリエントに関しては一昨年、中公新書の『古代オリエント全史』(小林登志子)を読み、昨年の暮れには本村凌二氏の『神々のささやく世界:オリエントの文明』『沈黙する神々の帝国:アッシリアとペルシア』を読んだ。だが、あまり頭に入っていない。馴染みの薄い固有名詞(地名と人名)が頭の中を通過していき、なかなか定着しない。受験生ではないので、憶える意欲が薄弱で、へぇーと思いながら頁をめくっていくだけだ。

 そんな私だが、本書の所々でかすかな既視感を得た。先行読書のおかげだ。歴史のイメージを把握するには、歴史書をくり返し読むしかなさそうだ。

 第1部は、猿人→原人→新人という人類の進化から文明の誕生までを概説し、文明と文化を論じている。人類は環境への適応方法を人工的に身体の外に見出した。道具などの技術である。それが文化を作り、文明につながる。動物(人類を含む)の進化に比べて道具の進化は加速度的との指摘にナルホドと思った。動物としての人間がさほど進化しないのに、道具だけがどんどん進化していく――示唆に富んだ指摘だ。

 第2部は古代オリエント史の概説である。前川氏が執筆した前半はシュメールからアッカドを経てウル第三王朝あたりまで、前2000年期頃までの歴史である。粘土板に刻まれた楔形文字に関する話が面白い。

 メソポタミアで出土した粘土板は何と50万枚ほどもあるそうだ。尋常な数ではない。学者たちは手分けして粘土板に刻まれた楔形文字の解読に取り組んでいる。楔形文字は一つの言語の表現ではない。メソポタミアとその周辺に興亡した集団の多様な言語が楔形文字で刻まれている。法典や叙事詩もあるが、多くは経済文書だそうだ。この概説の後段は、前川氏自身が携わった文書解読に関わる学術エッセイに近い。学者の仕事の現場を垣間見ることができて面白かった。

 渡辺氏が執筆した第2部後半は、アッシリアの黎明期から帝国への興隆と滅亡を中心に関連諸国を描いている。BC2000年頃からBC600年頃までの長い期間、多くの国が興亡する。あらためて、メソポタミア史とは複雑な国際関係の歴史だと思う。執筆者の渡辺氏は宗教学からアッシリア研究に進んだそうだ。『旧約聖書』が史料だろうかとは思うが、歴史理解には『旧約聖書』の読解が欠かせないようだ。

 第3部はエジプト史である。エジプトは砂漠という海に囲まれた細長い島国だとの指摘が面白い。メソポタミアは、あちこちに住む多様な人間集団が東西南北に移動しつつ興亡をくり返すのでゴチャゴチャしていて複雑だ。エジプトは前3000年頃から前500年頃までの長い期間に、初期王朝→古王国→第1中間期→中王国→第2中間期→新王国→第3中間期→末期王朝期と変遷していく。二次元でなく一次元なので比較的わかりやすい。

 この第3部を読んで、エジプト史もいろいろ起伏に富んでいて意外に面白いと感じた。前1200年頃、エジプト最初の考古学者と呼ばれる人物がいたとの記述には驚いた。ラメセス2世(大王)の息子のカエムウアセトである。ギザのピラミッドを修復し砂に埋もれたスフィンクスを清掃したそうだ。カエムウアセトにとってギザのピラミッドは約1300年前の遺物だから、十分に考古学の対象になる。あらためて一次元のエジプト史の悠久の時間を感じた。

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