唐十郎追悼公演は「唐が寺山修司を追悼した『ジャガーの眼』」2024年10月25日

 赤坂サカス広場の特設紫テントで新宿梁山泊公演『ジャガーの眼』(作:唐十郎、演出:金守珍、出演:大鶴義丹、水嶋カンナ、他)を観た。今年5月に亡くなった唐十郎追悼公演と謳っている。

 初演は1985年の状況劇場公演である。状況劇場の晩期作品だ。1983年に亡くなった寺山修司追悼をモチーフにしている。私が状況劇場の芝居を観たのは1969年から1979年までの10年間なので、この芝居は観ていない。今回が初見である。

 今回の公演パンフレットは、初演時のポスターやチラシ、初演時の劇評(扇田昭彦)、唐十郎の寺山修司への弔辞など「歴史的資料」を収録している。今回主演の大鶴義丹(唐十郎と李麗仙の子)も興味深い文章を寄せている。

 義丹の文章のタイトルは「ジャガーの眼が作ったもの、壊したもの」である。状況劇場の歴史は麿赤児、四谷シモン、大久保鷹、不破万作、根津甚八、小林薫などの怪優・名優が退団していく歴史でもある。その中で妻・李麗仙は中心女優であり続けた。しかし『ジャガーの眼』に李麗仙は出演せず、それまでサブキャストを固めていた唐十郎が主演を務めた。この頃、唐と李は離婚する(かなり昔、大鶴義丹は『昭和ギタン』で両親の確執を描いた)。唐十郎を「家族でなくなった父」と表現する義丹の言う「壊したもの」とは、両親の家庭であり、状況劇場(1988年解散)なのだと思う。

 その義丹が、かつて唐十郎が演じた役を演じている。唐十郎と李麗仙のDNAを受け継いでいても、彼は怪優とは呼び難い。しかし、冒頭の歌声が唐十郎そっくりなのにゾクッとした。

 寺山修司には『臓器交換序説』という演劇論集があるそうだ。扇田昭彦は初演時の劇評の表題を「唐版 臓器交換序説」としている。「ジャガーの眼」とは角膜移植された眼であり、斑紋がある。その眼を移植された若者は、以前の眼の持ち主が観た光景に脅かされ、以前の持ち主の内縁の妻に付きまとわれる――と書けば怪奇譚風だが、もちろんそんなわかりやすい話ではない。探偵、二十の扉、マトリョーシカのような巨大サンダル(寺山修司のベッドに残されていたサンダル?)、幸せのリンゴ……などが登場する輻輳した迷宮芝居である。

 移植手術の院長は妙にふくらんだ白衣をまとっている。白衣の下は、移植した奇怪な臓器で被われていた。ガラクタをまとったサイボーグのような姿に唖然とさせられた。

 カーテンコールのとき、金守珍が「唐さんと寺山さんは命日が同じでした」と語った。寺山修司は1983年5月4日、47歳で逝き、唐十郎は2024年5月4日、84歳で逝った。そういえば、寺山修司に『われに五月を』という作品集があった。