滅亡に向かう世界を描いた『献灯使』 ― 2024年04月04日
斎藤美奈子『日本の同時代小説』を読んで、私の知らない最近の小説の状況を垣間見た。最終章「2010年代 ディストピアを超えて」では、東日本大震災の体験から生まれた多くの小説を紹介していた。その中で興味を抱いた次の小説を読んだ。
『献灯使』(多和田葉子/講談社文庫)
多和田葉子の小説は、芥川賞の『犬婿入り』を読んだだけで、その内容もすでに失念している。『献灯使』は、斎藤美奈子がSF的純文学と紹介していたので読んでみたくなった。
本書は5篇から成る中短篇集で、表題作の『献灯使』の分量が6割以上、他の4篇は短篇だ。全5篇が原発事故による破局後と思われる世界を描いている。面白かったのは『献灯使』と『不死の島』で、他の3篇はよくわからなっかた。
斎藤美奈子が概要を紹介しているのは『不死の島』だった。この短篇をベースに展開したのが『献灯使』である。この2作が描く日本は、原発事故後に鎖国した異形の国である。老人は死ねない体になり、若者は脆弱で生き延びるのが困難な体になっている。百歳を越える丈夫な曾祖父がひ弱な曾孫の世話をしている。希望がほとんどない滅亡に向かう世界である。
曾祖父と曾孫の奇妙なコミュニケーションが面白い。支え・支えられながらの二人の生活の細やかな描写にはリアリティがある。この二人は互いに相手への思いやりがあり、愛情もある。しかし、世界や身体への考え方や感じ方は異なっている。生まれてから経験した環境が大きく異なっているからである。
現実の世界でも曾祖父と曾孫の世代差があれば、考え方や感じ方はすれ違う。そのギャップをさらに大きくデフォルメしたのが『献灯使』の世界だ。その意味でも、来るべき世界の姿が投影されているように感じた。
『献灯使』(多和田葉子/講談社文庫)
多和田葉子の小説は、芥川賞の『犬婿入り』を読んだだけで、その内容もすでに失念している。『献灯使』は、斎藤美奈子がSF的純文学と紹介していたので読んでみたくなった。
本書は5篇から成る中短篇集で、表題作の『献灯使』の分量が6割以上、他の4篇は短篇だ。全5篇が原発事故による破局後と思われる世界を描いている。面白かったのは『献灯使』と『不死の島』で、他の3篇はよくわからなっかた。
斎藤美奈子が概要を紹介しているのは『不死の島』だった。この短篇をベースに展開したのが『献灯使』である。この2作が描く日本は、原発事故後に鎖国した異形の国である。老人は死ねない体になり、若者は脆弱で生き延びるのが困難な体になっている。百歳を越える丈夫な曾祖父がひ弱な曾孫の世話をしている。希望がほとんどない滅亡に向かう世界である。
曾祖父と曾孫の奇妙なコミュニケーションが面白い。支え・支えられながらの二人の生活の細やかな描写にはリアリティがある。この二人は互いに相手への思いやりがあり、愛情もある。しかし、世界や身体への考え方や感じ方は異なっている。生まれてから経験した環境が大きく異なっているからである。
現実の世界でも曾祖父と曾孫の世代差があれば、考え方や感じ方はすれ違う。そのギャップをさらに大きくデフォルメしたのが『献灯使』の世界だ。その意味でも、来るべき世界の姿が投影されているように感じた。

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