映画『ナポレオン』はアッと言う間の2時間半2024年01月07日

 公開中の映画『ナポレオン』(監督:リドリー・スコット、主演:ホアキン・フェニックス)を観た。2時間半を超える大作、戦闘シーンは大迫力だ。ダヴィドの絵画を動画で再現した戴冠式も見ごたえがある。ナポレオンの事蹟を2時間半で綴るのだからダイジェストにならざるを得ないが、ナポレオン時代の壮大な絵巻物を観た気分である。

 昨年末、ナポレオン関連の本数冊(岩波新書世界史リブレットなど)を読んだばかかりなので、私の頭の中に一定のナポレオンのイメージができている。映画のナポレオンは、そのイメージとは少し異なっていた。歴史研究者と映画製作者との切り口の違いをあらためて認識し、それを面白く感じた。

 ナポレオンとジョゼフィーヌを中心に据えた映画である。ナポレオンが軍人として頭角を現していく頃からセントヘレナ島で没するまでの二十数年を、ナポレオンのジョゼフィーヌへの思いに焦点を当てて描いている。

 エジプト遠征の途中でナポレオンが少人数で帰国した主因を、ジョゼフィーヌの浮気を知ったことにしている。ナポレオンがエルバ島に流されたとき、すでにジョゼフィーヌを離婚しオーストリア皇女と再婚しているが、エルバ島脱出を決意するのは、ジョゼフィーヌとロシア皇帝の交際の報に接して怒りに燃えたせいにしている。ワーテルローで敗れた遠因をジョゼフィーヌの死を知った失意としているようにも見える。映画らしい目のつけ所だと感心した。史実にどれだけ近いか遠いか、私にはわからないが。