唐十郎の『秘密の花園』を三度目にしてテントで観た2022年10月13日

 猿楽通り沿い特設紅テントで唐組の『秘密の花園』(作:唐十郎、演出:久保井研+唐十郎、出演:藤井由紀、稲荷卓央、他)を観た。この芝居の初演は1982年(40年前)の本多劇場の柿落しとしで、緑魔子、柄本明、清水綋治らが出ていた(演出:小林達也)。私はこの柿落しを観ているが長い間失念していた。4年前に東京芸術劇場シアターイーストで上演された『秘密の花園』(演出:福原充則、出演:寺島しのぶ、柄本佑、他)を観た際、初演も観ていたことに気づいた。

 というわけで、この作品を観るのは三度目である。40年経ってやっと唐十郎らしいテント芝居に回帰したことになる(唐組はこの芝居を1998年以来何度かテントで上演している)。私にとっては時代を遡った気分だ。

 追憶の世界を辿るような「日暮里はキャバレーの多い町です。」という青年(アキヨシ)の独白で始まるこの芝居、冒頭でいきなりアキヨシは日暮里駅前に生えていた漆にかぶれて顔が腫れ、夢の中の世界の趣になり、さらには幻想的な坂道の上の世界を遠く眺めて、日暮里の古びたアパートの一室は異世界になる。そして、古い玩具箱をひっくり返したような懐かしさにむせる蠱惑的な物語が展開する。

 唐十郎の世界は何度観てもよくわからない。しかし、楽しい。読み解こうとすれば、いろいろな解釈を紡ぎ出せそうな気がするが、それはあくまでワン・オブ・ゼムの前提で解釈を楽しむだけである。そして、解釈ということにいかほどの意味があるのだろうかという気になってくる。

 よくわからないけれど、楽しくて惹かれる――それこそが、眼前の世界にわれわれが関わる真っ当な態度ではなかろうか。唐十郎の芝居を観ていると、そう思えてくる。