唐十郎作『秘密の花園』観劇で己の記憶への不信が高まった2018年01月30日

 東京芸術劇場シアターイーストで上演中の唐十郎作品『秘密の花園』(演出:福原充則、出演:寺島しのぶ、柄本佑、田口トモロヲ、他)を観た。久しぶりに唐十郎の夢幻的迷宮世界の彷徨を堪能した。

 同時に、わが記憶の迷妄曖昧を思い知った。またもや記憶のねつ造を認識させられたのだ。

 私は1960年代後半から70年代にかけて唐十郎の芝居をかなり観ている。その大半は唐十郎ひきいる状況劇場の紅テントの芝居だが、他の演出家による一般劇場の舞台も観ている。蜷川幸雄演出、沢田研二主演の『滝の白糸』などは印象深い。

 だが、今回『秘密の花園』のチケットを購入したのは、懐かしき往年の芝居を再度観たいと思ったからではなく、この作品が未見だったからである。新聞記事で『秘密の花園』が本多劇場の柿落としで上演された芝居だとあるのを読んで変だなと思った。

 私は本多劇場の柿落としを観た記憶がはっきりあり、それは唐十郎作『下谷万年町物語』だった。だから、新聞記事は間違いだと思った。近ごろの若い記者はいいかげんだなとも思った。

 そんな気分で池袋の芸術劇場に赴き、初見のつもりで『秘密の花園』を観劇した。途中、かすかにデジャブを感じるシーンもあったが、唐十郎の舞台をいくつも観ているので似た印象の場面があるのは当然だと思った。

 終演後も初見気分は持続していたが、やがて、己の記憶への疑惑がわいてきた。自分はかつて『秘密の花園』を観ているのではないかとの思いが生じたのだ。ネットで検索してみると、確かに本多劇場の柿落としは『秘密の花園』だ。そして、今回、田口トモロヲが演じた役が清水紘治だったと知り、清水紘治がラジカセを担いで登場するシーンがありありと思い浮かんできた。私は『秘密の花園』の初演を観ていると確信せざる得なくなった。

 かつて見た芝居を再度観てもそれに気づかなかったのは、記憶の消滅であり、書籍や映画では日常的に発生する事象なので驚くにはあたらない。だが、今回の観劇は自分に確信があったぶんだけショックが大きかった。

 ネット検索で調べてみると『下谷万年町物語』は『秘密の花園』初演(1982年)の前年に西武劇場(後のパルコ劇場)で上演されている。記憶の中でこの二つが融合したようだ。まことにわが記憶はあてにならない。

 今回の観劇では寺島しのぶが往年の李礼仙にそっくりなのに驚いた。デジャブを感じた。だが『秘密の花園』初演の主役は李礼仙ではなく緑魔子だと判明し、わがデジャブがいささか混乱した。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
ウサギとカメ、勝ったのどっち?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://dark.asablo.jp/blog/2018/01/30/8778916/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。