『シビル・ウォー』は米国の内戦を追う戦場カメラマンの話2024年11月28日

 映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を那覇市のシネマパレットで観た。現代の米国が内戦に突入した世界を描いた架空の同時代戦争映画だ。

 カリフォルニアとテキサスを中心とするWF(西部勢力)と政府軍の内戦状況のなか、女性戦場カメラマンら4人のジャーナリストが大統領インタビューというスクープのために車でワシントンDCを目指す話である。内戦で荒廃した世界のロードームービーの趣がある。

 戦闘場面だけでなく無政府状態での私刑や大量虐殺が描かれていて、現代世界で内戦が勃発したときの悲惨さが伝わってくる。

 内戦の原因などは語られていない。半世紀以上昔に筒井康隆氏が描いた『東海道戦争』の開戦理由は「東京が攻めてくるから」「大阪が攻めてくるから」だった。内戦とは防衛と攻撃がないまぜになりやすいのかもしれない。

 この映画で面白いと思ったのは、内戦下にあって「あえて内戦を見ない」という態度をとる人や町が存在することだ。中立や無関心とは少し違うように思う。積極的に殻にこもるという生き方であり、そのためには殻が頑丈でなければならない。現代的な態度のひとつかもしれない。

 映画を観ながら、戦場カメラマンとは不思議な仕事だとあらためて思った。大きな成果をあげた戦場カメラマンは多いし、戦場で命を落としたカメラマンも少なくない。戦場の実情を伝え、平和に資するのが彼らの使命だと思うが、過酷な仕事である。戦場カメラマンという仕事がなくなる世界になればいいはずだが、当分は無理だろう。戦場カメラマンがいなくなり、戦場だけが残る――そんな世界になると恐ろしい。