感染症と文明には切っても切れない関係がある ― 2020年06月11日
感染症と文明には切っても切れない関係がある
コロナ禍で増刷された次の新書を読んだ。
『感染症と文明:共生への道』(山本太郎/岩波新書)
発行は東日本大震災直後の2011年6月、私が読んだのは2020年4月28日発行の第6刷である。
コロナ禍になって『感染症の世界史』(石弘之)、『疫病と世界史』(マクニール)、『ペスト大流行』(村上陽一郎)などを読んだ流れで本書にも手を伸ばした。一連の読書で人類史における感染症の位置づけを把握できればと思った。
本書の前半にはマクニールの『疫病と世界史』やジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』などからの引用もあり、マクロな視点で感染症が人類の文明にどのように関わってきたかを説明している。だが、著者は歴史家ではなく国際的な感染症対策に従事してきた医師である。後半になると医師らしい視点の叙述が増えてくる。
私は本書によって初めて「帝国医療」「植民地医学」という言葉を知った。列強の帝国主義による植民地支配には感染症の研究が必須であり、その「帝国医療」「植民地医学」が近代医学の礎になっているのである。そう言えば「厚生省」という役所も戦時中に軍部の要請によって設立されたと聞いたことがある。
また、戦後のWHOによる天然痘根絶計画の実態に関する記述も興味深い。紀元前から存在した天然痘は1979年に根絶が宣言されたとは知っていたが、本書によって、その背後に日本人医師団のアフリカにおける壮絶な活躍があったことを知った。
そんな活躍を紹介しながらも、著者は次のように述べている。
「例えば天然痘根絶計画についても、この計画の成功が病原体と宿主を含む生態系にどのような影響を与え、長期的に人類の健康にどのような影響をもたらすことになるのか、現時点では誰にもわからない。」
本書のサブタイトルが「共生への道」となっているように、著者は病原体根絶の危険性を指摘し、次のように述べている、
「感染症のない社会を作ろうとする努力は、努力すればするほど、破滅的な悲劇の幕開けを準備することになるのかもしれない。大惨事を保全しないためは、「共生」の考え方が必要になる。」
コロナ禍で増刷された次の新書を読んだ。
『感染症と文明:共生への道』(山本太郎/岩波新書)
発行は東日本大震災直後の2011年6月、私が読んだのは2020年4月28日発行の第6刷である。
コロナ禍になって『感染症の世界史』(石弘之)、『疫病と世界史』(マクニール)、『ペスト大流行』(村上陽一郎)などを読んだ流れで本書にも手を伸ばした。一連の読書で人類史における感染症の位置づけを把握できればと思った。
本書の前半にはマクニールの『疫病と世界史』やジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』などからの引用もあり、マクロな視点で感染症が人類の文明にどのように関わってきたかを説明している。だが、著者は歴史家ではなく国際的な感染症対策に従事してきた医師である。後半になると医師らしい視点の叙述が増えてくる。
私は本書によって初めて「帝国医療」「植民地医学」という言葉を知った。列強の帝国主義による植民地支配には感染症の研究が必須であり、その「帝国医療」「植民地医学」が近代医学の礎になっているのである。そう言えば「厚生省」という役所も戦時中に軍部の要請によって設立されたと聞いたことがある。
また、戦後のWHOによる天然痘根絶計画の実態に関する記述も興味深い。紀元前から存在した天然痘は1979年に根絶が宣言されたとは知っていたが、本書によって、その背後に日本人医師団のアフリカにおける壮絶な活躍があったことを知った。
そんな活躍を紹介しながらも、著者は次のように述べている。
「例えば天然痘根絶計画についても、この計画の成功が病原体と宿主を含む生態系にどのような影響を与え、長期的に人類の健康にどのような影響をもたらすことになるのか、現時点では誰にもわからない。」
本書のサブタイトルが「共生への道」となっているように、著者は病原体根絶の危険性を指摘し、次のように述べている、
「感染症のない社会を作ろうとする努力は、努力すればするほど、破滅的な悲劇の幕開けを準備することになるのかもしれない。大惨事を保全しないためは、「共生」の考え方が必要になる。」
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